インストルメンテーションinstrumentationから生まれた新しい日本語で、1950年代から工業用語として用いられている。
原語instrumentationにはイギリスとアメリカとでは異なる解釈がある。イギリスにおいては日本語の「計測」の内容に近く「検出・観測・測定・自動制御・自動演算・通信ないし情報処理を目的とする物理量の計測器あるいはシステムを設計・製造・運用することである」とされる。1973年(昭和48)に発行された文部省および計測自動制御学会編集の『学術用語集 計測工学編』で「計測」の対応英語はinstrumentationと定め、意味も前述のイギリスの解釈に近い。一方、日本工業規格(JIS(ジス))の「計測用語」(JIS Z8103)では「計測」の対応英語をmeasurement scienceとしている。しかし、アメリカでは、かなり異なる解釈が存在する。すなわち、「計測制御を実行するためにセンサーや計測機器などを選択し、設置、配線や配管を行うこと」であって、「装備」のニュアンスが強い。この解釈はプロセス工業の計装技術者のなかでは支配的である。大学関係者のなかにはイギリスと同様の解釈が少数存在はするが、大勢ではない。
日本では、instrumentationの訳語として「計装」が普及していく過程で、原語とは若干異なる日本流の概念に変わっていった。実際に前述のJIS Z8103でも「計装」の意味として、「測定装置、制御装置などを装備すること」とアメリカの解釈に近い。そして、対応英語としてはもちろんinstrumentationをあげている。
現在日本で慣用されている概念は次の二つに集約される。
(1)「自動化や計測管理を行うために計測・制御装置を装備し、運用すること」 これはイギリスにおける解釈に近いが、英語の「計測」の概念より計測制御機器を装備、運用することに重点が移っているかに感じられる。
(2)プラントなどの設備における「計測制御システム機器の設計と設置に関連したことで、とくに配線・配管などの現場工事を含んでいる」 この解釈はアメリカの解釈に近く、プロセス産業の計測関係者の間では支配的である。これはどちらが正しいかではなく、ことばは生き物であることを認めなければならないのであろうが、イギリス英語とアメリカ英語の意味の相違が反映されていることを否定できない。日本語の「計装」の意味を海外向けに使う場合、安易にinstrumentationをあてるのではなく、イギリス英語とアメリカ英語における大きな相違を考慮に入れなければならない。
「計装システム」という用語がプロセス計測や制御の技術者により使われている。通常、検出・変換部(各種センサー)、信号伝送部、信号処理・制御部(調節計ないし計算機)、出力部(操作器、調節弁など)および計器や操作器を配置するコントロールパネルなどから構成される計測制御システムをさしており、(2)より(1)の解釈に近い。ここでも、「計装」と同様にハードウェアに重心がある。また、「プロセス計装」や「計装技術者」における「計装」はまさに(2)の意味で使われている。
[山﨑弘郎]
『文部省・計測自動制御学会編『学術用語集 計測工学編』増訂版(1997・計測自動制御学会)』▽『青島伸治著『計装工学入門』(1999・培風館)』▽『竹内実・黒岩重雄編『実務の計装技術』改訂新版(1999・電気書院)』▽『川村貞夫・石川洋次郎著『工業計測と制御の基礎――メーカーの技術者が書いたやさしく計装がわかる』(2003・工業技術社)』
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…ここでオンライン分析機器とは分析する試料を採取して分析室や試験室にある分析機器で分析するのではなく,生産ラインに直接組み込まれていて,専用化され,常時連続的,あるいは定期的に分析を行う機器のことをいう。
[プロセス計装]
計測や制御の対象に計測制御機器を装備することを計装instrumentationといい,プロセスの場合はプロセス計装と呼ばれる。現代ではほとんどのプロセスが計測管理および自動化されているので,プロセスの計画,基本設計の段階から計装が関係する。…
※「計装」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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