ウィーゼル(英語表記)Wiesel, Elie

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウィーゼル」の意味・わかりやすい解説

ウィーゼル
Wiesel, Elie

[生]1928.9.30. ルーマニア,シゲト
[没]2016.7.2. アメリカ合衆国ニューヨーク,ニューヨーク
ルーマニア生まれのアメリカ合衆国のユダヤ系作家。別名 Eliezer Wiesel。第2次世界大戦期のユダヤ人虐殺(→ホロコースト)の,冷静ながら烈々たる証言を示す作品で知られる。1944年アウシュウィッツ収容所に家族とともに送られ,両親ら親族を失った。戦後パリ移住,1948~51年ソルボンヌ大学で学び,卒業後フランスとイスラエルの新聞に執筆。1956年アメリカに移住し,1963年市民権を得た。1972~76年ニューヨーク市立大学教授を務め,1976年ボストン大学でアンドリュー・W.メロン記念人文学教授に就任。フランスでのジャーナリスト時代,作家フランソア・モーリヤックから強制収容所での体験の証言者となるよう促され,イディシュ語による第一作 "Un di velt hot geshvign"(1956)と,それを縮めたフランス語の『夜』La Nuit(1958)を執筆。『夜』と,『夜明け』L'Aube(1960),『昼』Le Jour(1961)の自伝的三部作で注目を集めた。ほか著作に『エルサレム乞食』Le Mendiant de Jérusalem(1968),評論『今日のユダヤ人』Un juif aujourd'hui(1977)など。それらの作品は,ホロコーストの生き残りとしての経験や,なぜホロコーストが起こったのか,それが明らかにする人間の本質とはなんなのかという倫理的な苦悩の解決の試みを反映する。作風にはユダヤの民話や瞑想的なハシディズム文学(→ハシディズム)の影響が認められる。1986年ノーベル平和賞受賞。

ウィーゼル
Wiesel, Torsten Nils

[生]1924.6.3. ウプサラ
スウェーデンの神経生物学者。カロリンスカ研究所で医学を修め (1954) ,アメリカのジョンズ・ホプキンス大学に招かれる。 1959年にハーバード大学に転じ,同大学教授 (74) 。同僚の D.H.ヒューベルと共同大脳皮質視覚野の構造,機能を詳細に解明し,大脳半球の機能分化を研究した R.W.スペリーとともに 81年ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

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