オオアリクイ(読み)おおありくい(英語表記)giant anteater

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオアリクイ」の意味・わかりやすい解説

オオアリクイ
おおありくい / 大蟻食
giant anteater
[学] Myrmecophaga tridactyla

哺乳(ほにゅう)綱貧歯目アリクイ科の動物。1属1種。アリクイのなかで最大で、体長1~1.3メートル、尾長65~90センチメートル、体重18~39キログラム。口先は細く、前肢に4本、後肢に5本のつめがあり、前肢の第3指にある巨大なつめはシロアリの巣を壊すのに役だつ。歯はまったくなく、65センチメートルにも伸びる長い舌で、シロアリや甲虫幼虫などをとらえて食べる。ホンジュラス南部ほかの中央アメリカよりアルゼンチン北部の沼地草原に、おもに単独で生活する。出産は1回1頭で、妊娠期間は190日、子は1年ほど親とともに過ごす。国際自然保護連合IUCN)の定める国際保護動物に指定されている。

[齋藤 勝]


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改訂新版 世界大百科事典 「オオアリクイ」の意味・わかりやすい解説

オオアリクイ
giant anteater
Myrmecophaga tridactyla

円筒状の頭部に続く細長い口吻こうふん)と長い舌をもつアリ食に特殊化した哺乳類。貧歯目アリクイ科。ホンジュラス南部からアルゼンチン北部までの湿った森林サバンナに生息する。体長1~1.2m,尾長0.7~0.9m,体重約20kgでアリクイ科中もっとも大型である。口の外に60cmものびる長い舌,完全に退化した歯,食物をすりつぶす強力な胃の筋肉など,アリを食べるために極端に特殊化した形質をもつ。前足の強大でとがった4本のつめで,アリやシロアリの塚を壊しながら,粘液のついた舌でアリなどをなめとって食べる。1日に3万匹ものアリやシロアリを食べるといわれる。つめは敵に対する武器としても使われる。地上生で,人家のないところでは日中活動する。口吻を地面近くに保つ独特の歩き方で,アリ塚を求めて絶えず移動し,一定の巣はもたない。単独性。雌は妊娠期間190日ののち春に1子を生み,長期間子を背にのせて運ぶ。母子は次の妊娠までいっしょに生活する。
アリクイ
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百科事典マイペディア 「オオアリクイ」の意味・わかりやすい解説

オオアリクイ

貧歯目アリクイ科の哺乳(ほにゅう)類。体長1〜1.2m,尾70〜90cmほど。灰黒色の剛毛でおおわれる。ベリーズ,グアテマラ〜ウルグアイ,アルゼンチン北部まで分布し,森林や草原で地上生活。前肢の大きなつめでシロアリ,アリの巣をこわし,細長い舌でなめて食べる。1腹1子。
→関連項目アリクイ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オオアリクイ」の意味・わかりやすい解説

オオアリクイ
Myrmecophaga tridactyla; giant anteater

貧歯目アリクイ科。体長 100~120cm,尾長約 60cmの大型のアリクイ。尾の上下方向には長毛があり,眠るときには毛布のように尾で体をおおう。前肢の爪は強力で,アリ塚をこわすのに役立つ。舌は長く,25cm以上も口から突き出すことができる。またその表面は粘着力に富み,好物のシロアリをなめ取るのに都合がよい。中央・南アメリカの草原にすむ。

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世界大百科事典(旧版)内のオオアリクイの言及

【アリクイ(蟻喰)】より

…円筒状の頭部から突出する細長い口吻(こうふん)部と長い舌をもつアリ食の,貧歯目アリクイ科Myrmecophagidaeの哺乳類の総称。オオアリクイMyrmecophaga tridactyla(イラスト),ミナミコアリクイTamandua tetradactyla(イラスト),キタコアリクイT.mexicana,ヒメアリクイCyclopes didactylus(イラスト)の4種がある。メキシコ南部から中央アメリカを経て南アメリカのパラグアイに至る熱帯林やサバンナに生息する。…

【アリクイ(蟻喰)】より

…円筒状の頭部から突出する細長い口吻(こうふん)部と長い舌をもつアリ食の,貧歯目アリクイ科Myrmecophagidaeの哺乳類の総称。オオアリクイMyrmecophaga tridactyla(イラスト),ミナミコアリクイTamandua tetradactyla(イラスト),キタコアリクイT.mexicana,ヒメアリクイCyclopes didactylus(イラスト)の4種がある。メキシコ南部から中央アメリカを経て南アメリカのパラグアイに至る熱帯林やサバンナに生息する。…

※「オオアリクイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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