国際自然保護連合(IUCN)が、特別に保護しないと絶滅のおそれがあると指定した希少動物。
具体的にはIUCNが編集し発行している『レッド・データ・ブック』Red Data Bookに記載されている種のことで、それぞれの動物が生息する当事国に保護の必要性を周知させている動物をいう。そのなかには日本のトキ、イリオモテヤマネコ、アホウドリなども含まれる。さらに広義には、国際保護鳥や、ワシントン条約登録種などに関連のある動物のすべてということになる。
国際保護鳥とは、バードライフ・インターナショナル(旧称、国際鳥類保護会議、1922年設立)が第12回東京会議(1960)で指定した、絶滅の危機に瀕(ひん)しているトキ、アホウドリ、カリフォルニアコンドルなどの13種のことである。しかし、その後絶滅の危機にある鳥類もかなり増えており、現在ではシンボル的な意味しかないといえる。
また、絶滅のおそれのある野生の動植物の国際取引を規制し、その保護を図るため1973年に採択されたワシントン条約(CITES(サイテス))のなかの、付属書ⅠとⅡに記載されている動物についても国際保護動物となっている。
[加瀬信雄]
『ピエール・ロレンツォ・フローリオ他著、今泉吉典他訳『滅びゆく野生動物』(1984・小学館)』▽『小野満春・加瀬信雄著『滅びゆく野生』(1986・福武書店)』▽『小原秀雄著『世界の天然記念物』全9巻(1987・講談社)』▽『L・カウフマン、K・マロリー編、宋貞淑・永戸豊野訳『最後の絶滅――沈みゆく方舟を守る』(1990・地人書館)』▽『ウォルター・V・リード、ケントン・R・ミラー著、藤倉良編訳『生物の保護はなぜ必要か――バイオダイバシティ「生物の多様性」という考え方』(1994・ダイヤモンド社)』
世界的な視野からみて,特別に保護する必要があると認めた希少動物を,国際自然保護連合が指定したもの。この中には,現在絶滅に瀕(ひん)しているもの,保護をはからないと絶滅する危険性の高いものなどが挙げられている。
これらの動物は,IUCN(国際自然保護連合)が発刊する《Red Data Book》という赤い表紙の本に,ルーズリーフ方式でとじられて,関係各国の政府機関やNGO(準政府機関)に広く周知されるようになっている。1996年現在,これに含まれている動物の種数は哺乳類1096,鳥類1107,両生類124,爬虫類253,魚類734,無脊椎動物1891(植物3万種以上)である。保護の必要が高まった動物は,随時追加されるが,逆に保護の成果が上がって,絶滅のおそれがなくなった動物は,はずされることもある。
本書には(1)絶滅の危険があるものendangerd,(2)注意を要するものvulnerable,(3)希少なものrare,(4)危機を脱したものout of danger,(5)状況不明のものindeterminateの区分があったが,1994年には,より客観的な評価を可能とするために,カテゴリー分けとその基準が全面改定された。現在は,(1)絶滅extinct,(2)野生絶滅extinct in the wild,(3)絶滅危惧threatened,(4)低リスクlower risk,(5)情報不足data deficient,(6)未評価not evaluatedに区分されている。
→希少動物
執筆者:柴田 敏隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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