チアミン(ビタミンB1)をピリミジン残基とチアゾール残基とに分解する酵素をいう。チアミンピリジニラーゼthiamine pyridinylase、アノイリナーゼaneurinase、ピリジントランスフェラーゼpyridine transferaseともよばれている。なお、藤田秋治(あきじ)(1895―1985)らは1942年(昭和17)、ハマグリ、アサリ、シジミなどのビタミンB1含有量を測定中、ビタミンB1が消失することからビタミンB1を分解する酵素のあることを発見、アノイリナーゼAneurinase(ドイツ語)と命名したが、同じころアメリカでも発見されてチアミナーゼと命名された。チアミン部分をピリジンとその他の適当な塩基に転移する反応を触媒する。その結果チアミンは分解され、ヘテロピリチアミン、その他の塩基置換体に変換される。チアミンの分解型式から、チアミナーゼⅠとチアミナーゼⅡの2種に分けられる。チアミナーゼⅠは、チアミンのチアゾール部分を塩基物質(ピリジンやアニリンなど)と置換するもので、貝類、甲殻類(エビやカニ)、魚類(海水魚より淡水魚に多い)、シダ植物に含まれる。チアミナーゼⅡは、チアミンをピリミジンとチアゾールに加水分解する酵素である。腸内細菌のチアミン分解菌Bacillus thiaminolyticusには、チアミナーゼⅠとⅡが多く含まれている。しかし哺乳(ほにゅう)動物組織には証明されていない。したがってその生理的意義は不明である。酵素活性は基質チアミンの残存率で測定するか、アニリンを置換基質として生成するアニリノチアミン〔N-(4-アミノ-2-メチルピリジン-5-イルメチル)アニリン〕を248ナノメートルの吸収で測定する。
[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]
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