アサリ(英語表記)Japanese little neck
Ruditapes philippinarum

共同通信ニュース用語解説 「アサリ」の解説

アサリ

みそ汁パスタの具などに使われる代表的な食用二枚貝。体長は4センチほどで、潮の干満で露出と水没を繰り返す河口や内湾に生息する。日本のほか、朝鮮半島や中国の沿岸にも分布する。最近は国内での収穫量が落ちてきており、潮干狩り場で韓国産や中国産を放流するケースが増えているとされる。国内産と海外産は同一の種と考えられてきたが、東京海洋大チームによる遺伝子研究で、中国にいる集団の一部と日本の集団は、同一種とはいえないほどの、遺伝的な違いがあることが判明した。

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改訂新版 世界大百科事典 「アサリ」の意味・わかりやすい解説

アサリ (浅蜊)
Japanese little neck
Ruditapes philippinarum

潮干狩りでもっともふつうにとれるマルスダレガイ科の二枚貝。殻の長さ4cm,高さ3cm,膨らみ2.8cm。長卵形で,殻表には細い多くの放射肋があり,成長脈と交わって多少布目状になる。殻頂はやや前方に寄り,その後に黒褐色の靱帯があって左右両側をつないでいる。殻色は幼貝ほど鮮明であるが,その色は,個体によって変異が著しく,白色から青黒色まで幅があるが,それに4本の放射する濃い色帯のあるものや,さざ波状あるいは折線状などがある。また左右の殻で模様の異なるものもあり,左右相称の多い野生動物の中で左右で模様の異なる珍しい例である。殻の色は煮ると褐色になる。内面は白色であるが殻表が青黒色の個体では後方が紫色になることが多い。殻頂の下にかみ合せの小さい歯があるが,それの前後縁にはない。外套(がいとう)膜の付着あとは後方から丸く湾入する。肉は白色で斧形の足があり,後方の入水管,出水管は互いに離れており白いが,先端は黒くなる。産卵期は5~12月であるが,5月と10~11月の2回が盛期で,卵は63~66μmで10時間でベリジャー幼生となり,海中を泳ぎ,22時間で背面に2枚の殻ができ,0.2~0.23mmくらいになる。沈下して底生生活に入り,足から糸を出して砂粒に付着する。小石混じりの砂泥底を好む。半年で2.2cm,1年で3cmくらいに成長する。稚貝を放養することもあり,1m2当り0.5~5kgをまくと,1年で殻長で1.5倍,重量で3倍くらいになる。ハマグリのような顕著な移動性はない。鳥,ヒトデ,タコ,食肉性のツメタガイイボニシなどは養殖の害敵である。北海道から九州,沿海州,朝鮮半島,中国,台湾の内湾の潮間帯から水深10mくらいの砂泥底に生息するが,ハワイや北アメリカ西岸にも移入されている。学名のphilippinarumはフィリピン産の意味であるが,これは産地誤認による。近似種ヒメアサリR.variegataは小型で殻の膨らみが弱く,内面が赤みを帯び,本州以南,奄美,沖縄から太平洋諸島に広く分布する。
執筆者:

殻つきのものは〈からあさり〉と呼ばれる。塩分2~3%の塩水に5~6時間以上つけて砂を吐かせ,みそ汁やすまし汁に使う。むき身は,湯に通してからネギ,ワカメなどと酢みそであえるぬたのほか,かき揚げ,つくだ煮,酒蒸し,チャウダーなどにする。むき身を飯に炊き込んだり,油揚げやネギと煮て飯の上へかけたりするものは深川飯と呼ばれ,東京の下町で親しまれた食物であった。
執筆者:


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食の医学館 「アサリ」の解説

アサリ

《栄養と働き》


 アサリは「漁る」から名がついたように、春の潮干狩りの主役的存在です。東京湾、伊勢湾、三河湾、瀬戸内海、有明海など、全国各地の潮間帯から10m以浅の砂泥底に生息しています。日本以外に、中国、韓国、フィリピンにも分布します。
〈タウリンが血管と肝臓をまもる〉
○栄養成分としての働き
 栄養の特徴は、タウリンを豊富に含むこと。これはアミノ酸の一種で、血液中の余分なコレステロールを排除するため、血液の粘度を下げ、動脈硬化を防ぎます。また肝臓の解毒作用を助け、肝機能が正常に働くのを助けます。血圧が高い、中性脂肪が気になる、血糖値が高い、肝臓機能が衰えているという人におすすめです。
〈ビタミンB12と鉄分が貧血を防ぐ〉
 ビタミンB12は、貝類のなかでも最高の含有量です。B12は、葉酸(ようさん)と協力しあい赤血球の産生に働くほか、神経細胞内のたんぱく質や脂質、核酸の合成を助け、神経系を正常に働かせます。悪性貧血を防ぎ神経系を正常に働かせる作用があります。
 また血液のヘモグロビンの成分になる鉄も豊富です。鉄が不足すると、酸欠状態になり、疲れやすくなったり、息切れ、めまいなどの貧血症状が現れます。貧血ぎみの人や、痔(じ)の人、妊婦、授乳婦などに最適です。さらに、鉄分の吸収を高める銅のほか、発育をうながし、味覚や嗅覚を正常に保つ亜鉛(あえん)も含有しているので、これらの相乗効果で、血行をよくし、つややかな肌を保たせたり、髪の枝毛や抜け毛を防いだりします。

《調理のポイント》


 貝特有のうまみは、コハク酸を多く含むことによりますが、アサリはそのコハク酸が多く、甘みであるグリコーゲン(動物性甘味)も含んでいます。
 身の太った2月~4月がコハク酸やグリコーゲンをたくさん含むので旬(しゅん)といえます。産卵後のアサリはうまみが減るので味は落ちます。
 調理は、殻(から)つきなら味噌汁、酒蒸(さかむ)し、パスタのソースに。むき身ならアサリ飯、ぬた、かき揚げ、トマト煮、チャウダーに適しています。
 アサリを炊き込んだご飯は「深川丼(ふかがわどん)」として有名ですし、アサリを甘辛く煮た「アサリのつくだ煮」も広く知られています。
〈貝の塩抜き、見分け方〉
 貝をおいしく味わうためには、生きていることが必須。とりたては、砂を吸いこんだままなので“砂抜き”をかならず行いましょう。よく貝を水洗いしたあと、約3%(2カップの水に塩小さじ2杯くらい)の食塩水に、数時間つけ、常温で静かな暗いところへ置きます。真水では貝が弱りますから避けてください。
 殻(から)つきのアサリなら、模様が鮮明で、ぬめりのあるもの。また殻をかたく閉じ、塩水につけると水管をよく伸ばして水を噴出するものが新鮮。むき身なら、弾力とつやのあるものを選びましょう。
○注意すべきこと
 初夏から初秋にかけては中毒を起こしやすくなるので、十分加熱するなどの注意が必要です。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アサリ」の意味・わかりやすい解説

アサリ
あさり / 浅蜊
Japanese littleneck clam
baby-neck clam
[学] Ruditapes philippinarum

軟体動物門二枚貝綱マルスダレガイ科の食用二枚貝。内湾の潮間帯から水深10メートルぐらいまでの砂泥底にすむため簡単に漁獲される。これが和名の語源「漁る貝(あさるがい)」の由来といわれる。樺太(からふと)(サハリン)から日本全土、さらには朝鮮半島、中国、台湾にまで分布する。殻長40ミリメートル、殻高30ミリメートルぐらいの長楕円(ちょうだえん)形で、左右が膨らむ。環境の好ましくない所に育った個体は前後が短く、俗にダルマアサリとよばれる。殻表には多くの細く鋭い放射肋(ろく)があり、成長輪脈(りんみゃく)と交わって布目状となり、とくに後背部では粗く、いくぶんやすり状になる。殻頂は前方に寄って傾斜し、その後方に靭帯(じんたい)があって両殻片を連結している。殻色は変異に富み、白色地に黒色の山形模様や放射色帯があるものから、黄褐色で波形の模様があるものまで多様である。両殻で模様の異なる個体もある。殻色は煮たり、あるいは長期保存すると容易に変わる。内面は白いが、後方に紫色を帯びる個体もある。かみ合わせの歯は小さく、殻頂の下に放射状に配列する。軟体の足は白いが、外套膜(がいとうまく)縁などは多少黄橙(おうとう)色がかる。出水管、入水管は白く基部で互いに離れ、黒みを帯びた先端には微細な突起がある。

 産卵期は春(5月ごろ)と秋(10~11月)の2回。卵は直径63~66マイクロメートル、受精後10時間ほどでベリジャー幼生となり、22~24時間で0.2~0.23ミリメートルぐらいになると底生生活に入り、初めは足糸で砂粒に付着する。多い所では1平方メートル当り50万以上の稚貝が沈着し、半年で殻長22ミリメートル、1年で30ミリメートルに育つ。稚貝が多く育つ所では採捕して広い育成場にまきつける。普通は漁業協同組合などの協同事業として内湾の砂地に粗放的なまきつけ養成が行われ、1平方メートル当り0.5~5キログラムぐらいの見当でまかれる。1年間に殻長で1.5倍ぐらい、重量で約3倍に成長し、春の大潮などに遠浅の内湾の干潟で行われる潮干狩の主要な獲物となる。そのほか、水辺の鳥類、ヒトデ、ツメタガイなどの肉食性貝類やカニなどの天然餌料(じりょう)となる。

 近縁種のヒメアサリR. variegataはアサリに似ているが外洋的環境を好み、やや小形で膨らみは弱く殻表の彫刻も浅い。また、色彩も橙赤(とうせき)色を帯びて色斑(はん)も細かく、水管触手もアサリと異なる。

[奥谷喬司]

料理

秋から春にかけて味がいい。貝殻つきのまま、澄まし汁、みそ汁の実に用いると美味である。むき身はしょうゆ、酒、塩で薄味をつけて、ネギといっしょに煮るのもいいし、おからと煮ると味がよくあう。かき揚げ、佃煮(つくだに)などにも用いる。繁殖期には中毒のおそれがあるので、注意を要する。

[多田鉄之助]


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日本歴史地名大系 「アサリ」の解説

アサリ
あさり

漢字表記地名「朝里」のもととなったアイヌ語に由来する地名。享保十二年所附に「あさり沢」、松前蝦夷地島図(文化一三年、北海道大学北方資料室蔵)にアサリとある。「蝦夷日誌」(二編)に「夷人小屋、二八小屋」と記される。「廻浦日記」によれば、アサラが訛ってアサリというが、本名はアッウシナイという。また「二八出稼十六軒、番屋一棟梁四間、桁七間、雑蔵、雇夷人小屋、廊下等有。稲荷の社有梁二間、桁二間半」とみえる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アサリ」の意味・わかりやすい解説

アサリ
Ruditapes philippinarum; Japanese little neck

軟体動物門二枚貝綱マルスダレガイ科。殻長 4cm,殻高 3cm,殻幅 2.8cm。殻は長楕円形。殻表には多くの細い放射肋があり,後方でややあらく,成長脈と交って布目状となる。殻色は個体変異が多く,白から黒青色まであり,模様も折線模様,放射帯などいろいろである。また左右両殻で模様が異なるものがあり,野生動物 (普通は左右相称) では珍しい例となっている。煮ると殻色は褐色になる。内面は白色であるが,後方は紫色を帯びる。軟体は白く,足は斧形。出・入水管は離れていて先が黒い。北海道から九州までと,台湾,朝鮮半島,中国,サハリンに広く分布し,内湾の潮間帯から水深 10mまでの砂泥底にすむ。産卵は5,10月が盛んで,産卵後 22時間でベリジャーになり,0.2mmほどになると底生生活に入り,足糸を出して石に付着する。半年で 2.2cm,1年で 3cmに成長する。食用。

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百科事典マイペディア 「アサリ」の意味・わかりやすい解説

アサリ

マルスダレガイ科の二枚貝。殻は長卵形で,高さ3cm,長さ4cm,幅2.8cm。殻表の模様は個体によって著しく異なり,表面に細かい放射状のすじをもつ。北海道から九州,沿海州,朝鮮半島,中国,台湾の内海の潮間帯から水深10mぐらいまでの砂泥底に普通。産卵期は5〜12月。殻は煮ると褐色になる。肉は食用とし,むき身,つくだ煮,干物などに利用。

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栄養・生化学辞典 「アサリ」の解説

アサリ

 [Ruditapes philippinarum].ハマグリ目アサリ属の二枚貝.わが国で広く食用に供される.河口や浅い海でとれる.

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世界大百科事典(旧版)内のアサリの言及

【鋸】より

…鋸びきは木材の繊維を切断する仕事と,切断によってできた〈おがくず(鋸屑)〉を挽道外に排出する仕事の二つからなりたっているが,前者は主として鋸刃先の鋭利さに,後者は歯形,歯数などに左右される。また,ひき作業の難易は一つの歯にかかる挽代(ひきしろ)の大小と,ひき面と鋸身面との摩擦の有無によるが,これには歯距の大小と,鋸刃先をひろげて摩擦を防ぐための〈あさり(歯振)〉の有無と大小が関係する。 木材の切断は繊維に平行な縦びきと,直角な横びきと,繊維方向に無関係にひく場合がある。…

【採草採貝業】より

…ただし,貝類をとる漁業であっても,潜水器漁業と小型底引網漁業は農林水産統計上は含めない。年間漁獲量は10万tを割っているが,この60%はアサリが占める。アサリは〈腰まき〉あるいは〈大まき〉という漁具で,浅いところでは水に入り,また深いところでは船の上から海底をさらって漁獲する。…

※「アサリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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