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シダ植物 シダしょくぶつPteridophyta

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

シダ植物
シダしょくぶつ
Pteridophyta

系統学的に,コケ植物コケ類)と種子植物との中間に位置する植物群であると考えられている。それは水分や養分を通す維管束系をもつ点で種子植物と共通した性質をもち,胞子で繁殖する点でコケ植物と共通するからである。また世代の交代が明確なこともコケ植物と同様である。しかしシダ植物では,胞子体世代(無性世代)のほうが配偶体世代(有性世代)より形態的にも複雑で,大きさも大きく,また両世代が独立に生活する点がコケ植物とは異なる。シダ植物は古生代シルル紀以来,4億年以上の長い歴史を有し,次の 4群に大別される。 (1) マツバラン類,(2) ヒカゲノカズラ類,(3) トクサ類,(4) シダ類で現生のシダの大部分はシダ類に属している。また今日では絶滅してしまったが古生代から中生代の化石のなかにはシダ植物でありながら,種子をつけるシダ種子類(ソテツシダ類)があった。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シダ植物
しだしょくぶつ / 羊歯植物
pteridophyte
[学]Pteridophyta

維管束植物のうち、種子をつくらないものの総称。無性世代と有性世代との世代交代を規則正しく行って生活し、繁殖する。われわれが普通にみかけるシダは無性世代のもので、造胞体とよばれ、無性的に胞子を生じる。有性世代のものは、形態が小さな心臓形の葉状体である場合が多く、前葉体(配偶体)とよばれ、有性生殖を行う。
 シダ植物には、水生シダやミズニラのように水生のものもあるが、大部分は陸生である。高温多湿の日陰を好むものが多く、多雨地にはコケシノブ科、シシラン科、ウラボシ科、ヒカゲノカズラ科などの着生シダが多い。しかし、なかには、日当りがよくて乾燥した場所を好むワラビ、ヒメワラビ、コシダ、ミズスギのような種もある。大きさはさまざまで、体長数センチのアカウキクサのような小形から、葉長3~5メートルに達するタカワラビ、リュウビンタイ、高さ8メートル以上になる大形木生シダまである。シダ植物は世界に約1万種あり、このうち、日本に分布するのは700種である。[西田 誠]

生活史

シダ植物の生活史を、胞子形成から説明する。まず、シダ(造胞体)の葉の裏面に多数の胞子嚢(のう)からなる胞子嚢群ができ、胞子嚢内では多数の胞子が生ずる。この胞子は発芽して前葉体となる。前葉体は一般に体長0.5~2センチメートルの心臓形で、小形のゼニゴケ類か緑藻のようにみえ、尾部の裏面に造精器、先端部に造卵器を生じて、それぞれ精子と卵を形成する。造卵器内で両者が合体して接合子となり、さらに分裂して胚(はい)をつくり、これが生育して新シダとなる。この世代交代を通して核相交代をみると、造胞体は核相2nの複相であり、前葉体は胞子形成の際の胞子母細胞の減数分裂のため、核相nの単相となる。そして精子と卵が合体したものはふたたび複相になる。このように、シダ植物にあっては世代交代と核相交代は一致している。
 造胞体、すなわちシダの体には維管束があり、仮道管がその主要素であるが、被子植物にあるような道管はない。胞子嚢の生じ方は種によって異なり、根茎から大形の葉をまばらに出すシダ類では、葉の縁か下面に胞子嚢を群生し、茎上に小さな葉を密生するヒカゲノカズラ類では、葉の上面に1個の胞子嚢を生ずる。また体に節のあるトクサ類では、変形した枝先に胞子嚢を群生する。ヒカゲノカズラ類およびトクサ類は、花の原型ともみられる胞子嚢穂(すい)をつくる。
 前葉体には、地上生と地中生がある。前者は大部分のシダ類とトクサ類にみられ、一般に心臓形であるが、へら形(アネーミア)、帯状(シシラン科)、糸状(ホラゴケ属フサシダ)など特異なものもある。いずれも緑色で、光合成を行う。地中生の前葉体は塊状(ハナワラビ属、ヒカゲノカズラ属)か、細い円柱状(ハナヤスリ属、マツバラン属)で、葉緑体を欠くが、内生菌を共生させ、菌栄養によって生育する。前葉体には有性生殖器官である造精器と造卵器ができ、精子と卵をつくる。
 造精器は数個の壁細胞に囲まれ、球形または半球形で体表に露出していることが多い。精子は螺旋(らせん)状に1~2回巻いた線形の核で、頭部に多数の鞭毛(べんもう)をもつ。ただしイワヒバ属の鞭毛は2本である。一般に下等なものほど造精器は大形で壁細胞数が多く、中につくられる精子の数も多い。
 造卵器は頸部(けいぶ)と腹部とからなり、頸部には、普通、1個の二核性の頸溝細胞が、腹部には卵と腹溝細胞が含まれる。成熟すると頸溝細胞、腹溝細胞は溶けて弱酸性の粘液となって吐出される。それに対して正の走化性をもつ精子が頸部に集まり、頸溝を通って卵に達して受精する。受精卵は造卵器内で胚となり、のちに幼シダに成長する。[西田 誠]

分類

シダ植物は古生マツバラン綱、ヒカゲノカズラ綱、トクサ綱、シダ綱、前裸子綱の5綱に分けられる。
(1)古生マツバラン綱(プシロフィトン綱・無葉綱・裸茎綱) もっとも簡単な体制をもった維管束植物である。体は叉状(さじょう)に分枝する茎からなり、根と葉を欠く。茎には、1本の維管束が通る原生中心柱がある。胞子嚢が枝の末端に1個つくものと、枝の側方に多数つくものとがあり、前者にはリニア、クックソニア、プシロフィトン、後者にはゾステロフィルム、アステロキシロンなどがある。いずれも後期シルル紀から前期デボン紀にかけて知られる最古の維管束植物で、シダ植物の原型である。
(2)ヒカゲノカズラ綱(小葉(しょうよう)綱) 体は茎、葉、根に分化しているが、葉は1本の葉脈をもった針状か鱗片(りんぺん)状の小葉である。胞子嚢は胞子葉の上面に生じ、胞子葉は茎の頂部に集まって胞子嚢穂をつくる傾向がある。前期デボン紀にはすでに古生ヒカゲノカズラ類が知られており、その起源は古い。葉の基部上面に生ずる小舌の有無によって、無舌類と有舌類に大別される。無舌類は胞子が1種類の同型胞子をつくり、配偶体は地中生で菌栄養によって生育する。古生ヒカゲノカズラのほか、現生種にはマツバラン、ヒカゲノカズラ、マンネンスギなどがある。有舌類は大小2型の異型胞子をつくり、大胞子の壁内に雌性の、小胞子の壁内に雄性の配偶体がつくられるが、いずれも退化縮小している。鱗木(りんぼく)類(石炭紀からペルム紀〈二畳紀〉に繁茂した大木)のほか、現生種にはイワヒバ類、ミズニラ類がある。
(3)トクサ綱(楔葉(けつよう)綱・有節綱) 体が節部と節間部とからできており、節部から葉や茎が輪生する。葉には小葉と大葉の2型がある。胞子嚢は胞子嚢柄(へい)の末端に下向きに垂れ下がり、胞子嚢柄は茎頂に密生して胞子嚢穂をつくったり、球果状になったりする。現生種ではトクサ属の二十数種が生き残っているにすぎないが、石炭紀には大木となったカラミテス類、つる状のスフェノフィルム類が繁茂していた。トクサ類の化石はすでに中期デボン紀から知られており、有節構造の起源については謎(なぞ)が多い。
(4)シダ綱(大葉(たいよう)綱) 体は茎・葉・根に分化し、大葉をもつ。小葉が枝や茎に生じた刺(とげ)状の突起の変形であるのに対し、大葉は枝系そのものの変形で、その変形の過程は次のように考えられている。まず、古生マツバラン綱にみられるような細かく分枝した枝系が一見シダ状の葉のようになり、さらに石炭紀の古生シダ類にみられるような葉態枝となり、それが葉身形成を行って葉になったというわけである。
 葉態枝をもつ古生シダ類では胞子嚢は小枝の先に1個つくことが多いが、現生のシダ類では葉の縁か裏面に胞子嚢群(ソーラス・嚢堆(のうたい))をつくって群生する。胞子嚢群は膜質の包膜や、胞子嚢間に生える側糸によって保護される。胞子嚢には壁が1細胞層からなる薄嚢(はくのう)と、多細胞層からなる真嚢(しんのう)がある。現生シダ類は真嚢シダ類と薄嚢シダ類とに分けられるが、古生シダ類にも真嚢と薄嚢はみられ、その分化は石炭紀までさかのぼることができる。真嚢シダ類にはハナヤスリ科、リュウビンタイ科があり、ハナヤスリ科では地中生の塊状または円柱状で分枝した前葉体をつくり、菌栄養によって生育する。薄嚢シダ類には、薄嚢と同型胞子をもつゼンマイ科、コケシノブ科、ヘゴ科、シノブ科、オシダ科などが含まれる。薄嚢をもつ水生シダ類は異型胞子を生じ、大胞子、小胞子はそれぞれの壁内で、雌性、雄性の縮小した前葉体をつくる。薄嚢シダ類は壁の一部の細胞が厚壁となり、嚢を取り巻く環帯となるが、この環帯の発達程度が科の分類の標徴となる。
(5)前裸子綱(原始裸子綱) 体の地表部は葉態枝で一見シダ型の葉のようにみえ、細枝の末端に大小2種の胞子嚢をつける。葉態枝には多少とも二次木部が発達し、低木(アネウロフィトン類)または高木(アルカエオプテリス類)となる。二次木部の仮道管は、他のシダ植物が階紋(壁孔が重なって階段状にみえる模様)をもつのに対し、裸子植物状の有縁孔をもつ。しばしば球果類にみられるような放射仮道管が現れ、茎の構造はシダ植物というよりは裸子植物的である。デボン紀中期から後期にかけて生育し、裸子植物の祖型といわれている。[西田 誠]

類縁と系統

シダ植物をまず近縁のコケ植物と比較してみると、生活史の主相がシダ植物では造胞体、コケ植物では配偶体である点が異なる。しかしツノゴケ類には、造胞体に分裂組織があって無限成長する傾向があり、その胚発生の初期形態はマツバラン類のそれに似ている。古生マツバランに含まれるリニアの配偶体は、造胞体と同程度に発達しており、造胞体が配偶体になかば寄生的に依存していたと思われる。リニアの体制はマツバランに似ているが、その生活史はコケと典型的なシダの中間の型であるといえる。このようにコケとシダの系統的接点は、ツノゴケ類とリニア類の間にみいだすのが妥当であろう。
 前裸子類は体構造が裸子植物の段階まで達しているが、進化の過程からみると、低木性のアネウロフィトン類では葉態枝がそのまま大葉となり、大胞子嚢がその周りの小枝群で包み込まれるようになって胚珠を形成してシダ種子類へと進み、高木性のアルカエオプテリス類では葉態枝の末端枝に葉身が発達して単葉となり、球花(雌性の花)を形成してコルダイテス類へと進んだと思われる。やがて、シダ種子類からは中生代に入ってソテツ類が、コルダイテス類からは古生代末に球果類が派生した。
 球果類の球花に似た穂状の胞子嚢穂をもつヒカゲノカズラ類では、石炭紀の鱗木類において、大胞子嚢が大胞子葉に包まれて種子の一型を形成した(レピドカルポン)が、真の種子は成立しなかった。また、胞子嚢は胞子葉上面につくので、胚珠(大胞子嚢)、花粉嚢(小胞子嚢)が下面につく球果類との類縁性はないものと思われる。
 トクサ類では、石炭紀のカラミテス類に異型胞子はみられるものの、胚珠を形成する兆しがまったくみられず、種子を成立させることはなかった。[西田 誠]

利用

シダ植物には、観葉植物として庭園、温室に栽植されるもののほか、鉢物として利用されるものも多い。ベニシダ、イノデ、クサソテツなどは和風庭園に、アジアンタム、タマシダ、オオタニワタリ、ビカクシダなどは温室内でよくみかける。鉢物としてはヒトツバ、イワオモダカ、イワヒバ、マツバランなどが知られ、とくに後二者は江戸時代から栽植され、多くの品種が育成されている。ワラビ、ゼンマイ、クサソテツには独特の風味があり、広く食卓に供されている。オシダ、オクマワラビの根茎は綿馬根(めんまこん)と称して駆虫剤に、ヒカゲノカズラの胞子は石松子(せきしょうし)とよばれて花粉の希釈剤や線香花火に用いられる。
 元来、シダといえばウラジロを意味していた。語源は羽片が垂れ下がることから、「垂れ下がる」つまり「しだる」から転化したことばといわれる。またこれを「歯垂る」「齢(し)足る」と長寿に意味づけ、正月の注連(しめ)飾りに縁起物として用いてきた。[西田 誠]
『本田正次監修、山崎敬編『現代生物学大系7a2 高等植物A2』(1984・中山書店) ▽本田正次監修、山崎敬編『現代生物学大系7b 高等植物B』(1981・中山書店) ▽田川基二著『原色日本羊歯植物図鑑』(1959・保育社) ▽西田誠著『陸上植物の起源と進化』(岩波新書)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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