リンダール(英語表記)Lindahl, Tomas

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リンダール」の意味・わかりやすい解説

リンダール
Lindahl, Tomas

[生]1938.1.28. ストックホルム
スウェーデン生化学者(→生化学)。カロリンスカ研究所で 1967年に博士号,1970年に医学博士号取得。1978年から 1982年までエーテボリ大学教授を務めたのち,1986年から 2005年までイギリスの王立癌研究基金クレアホール研究所所長を務めた。その後,イギリスのフランシス・クリック研究所の名誉研究リーダーとキャンサー・リサーチUKの名誉所長を務める。遺伝子を含んでいるデオキシリボ核酸 DNAは,不安定で壊れやすいリボ核酸 RNAに比べ,安定であると思われていた。それに疑問をもったリンダールは 1960年代に「安定に見える DNAも壊れるはずで,その異常を感知し修復する機構が細胞にあるはず」と考え,研究を開始した。その結果,DNAをつくる塩基 1個が一部を失うなどして異常になったとき,それを元に戻す塩基除去修復という機構を解明,まちがっている塩基を認識し除去する酵素グリコシラーゼを発見してこの分野の端緒を開いた。2015年,生物遺伝を司る細胞内の DNAが複製の誤りを起こしたり紫外線発癌物質などの外部影響で損傷したりしても正しく直す DNA修復機構を解明した功績により,ポール・モドリッチ,アジーズ・サンジャールとともにノーベル化学賞(→ノーベル賞)を受賞した。

リンダール
Lindahl, Erik Robert

[生]1891
[没]1960
スウェーデンの経済学者。ルンド大学哲学法学を学び,1919年法学博士,20年ウプサラ大学講師,32年エーテボリ商科大学,39年ルンド大学,42年ウプサラ大学で教授を歴任,その後各種政府機関にも関係。スウェーデン学派 (→北欧学派 ) の貨幣景気循環理論の発展に貢献,また一般均衡理論に時間要素を導入してその動態化をはかり,事前 (エクス・アンテ) と事後 (エクス・ポスト) の概念の区別,予想概念の導入,ミクロ概念とマクロ概念の関連からする国民所得分析への接近など,多くの新しい分析手法を開拓。主著『貨幣および資本理論の研究』 Studies in the Theory of Money and Capital (1939) ほか著書,論文多数。

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