J・G・K・ウィクセルおよびG・カッセルを始祖とする経済学の学派。スウェーデンのストックホルムを中心とするので、ストックホルム学派Stockholm schoolあるいはスウェーデン学派Swedish schoolともいう。ノルウェーのオスロ大学のR・A・K・フリッシュやT・ホーベルモなどは、オスロ学派Oslo schoolともよばれるが、広く北欧学派に含められる。ストックホルム学派は、ウィクセルの流れとしてのE・R・リンダール、E・F・ルントベリーらと、カッセルの流れとしてのK・G・ミュルダール、B・G・オリーンらに区分されたこともあるが、最近では必要あるまい。
北欧学派は理論的に優れた業績をあげているのみでなく、その視野が広くて社会学的、心理学的、制度主義的な研究にも優れ、かつその態度は実践的であって、景気変動、物価、財政、福祉、国際経済などの諸分野において優れた政策的立言もみられる。かくてこの学派はさまざまの分野で経済学の発展に貢献している。始祖ウィクセルはM・E・L・ワルラスの一般均衡理論とベーム・バベルクの資本理論を導入・展開するほか、有名な彼の「累積過程の理論」で動学分析の手法を示したが、彼はまた現実の諸問題にも深い関心を示した。カッセルは一般均衡理論を追究し、景気変動の実証分析に努めたが、購買力平価説を説いたのも彼である。そのほか、リンダールは貨幣的景気理論、一般均衡理論の動学化、公共政策理論で、ルントベリーは景気循環論で、オリーン(1977年ノーベル経済学賞受賞)は国際経済論で優れた業績を示したが、さらに彼らによる「期間分析」や「事前・事後分析」の手法の貢献も大きい。またミュルダール(1974年ノーベル経済学賞受賞)は、初期には『貨幣的均衡論』(1931)、『経済学説と政治的要素』(1930)を著したが、その後の活動は幅広く、人種問題、貧困問題、開発途上国問題等を論じ、『福祉国家を越えて』(1960)、大著『アジアのドラマ』(1968)を世に送り、さらに『反主流の経済学』(1972)では現代の経済学を鋭く批判している。オスロのフリッシュ(1969年第1回ノーベル経済学賞受賞)は、後継者ホーベルモ(1989年ノーベル経済学賞受賞)とともに、計量経済学の分野などで優れた業績を示している。
[佐藤豊三郎]
『J・G・K・ウィクセル著、堀経夫・三谷友吉訳『国民経済学講義』全2冊(1938、1939・高陽書院)』▽『青山秀夫著『剣橋学派及び北欧学派の経済変動理論』(1953・創文社)』▽『T・W・ハチスン著、長守善他訳『近代経済学史』全2冊(1953・東洋経済新報社)』▽『T・ホーヴェルモー著、山田勇編・訳『計量経済学の確率的接近法』(1955・岩波書店)』▽『G・ミュルダール著、S・キング編、板垣与一監訳『アジアのドラマ』全2冊(1974・東洋経済新報社)』▽『鈴木諒一著『北欧学派――その資本理論の研究』(1976・泉文堂)』▽『J・G・K・ウィクセル著、北野熊喜男訳『価値・資本及び地代』(1986・日本経済評論社)』▽『辻村和佑著『資産価格と経済政策――北欧学派とケインズの視点』(1998・東洋経済新報社)』▽『藤本利躬著『経済政策とインプリメンテーション――フリッシュ研究』(1999・御茶の水書房)』
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…19世紀末から20世紀前半にかけてのスウェーデンの経済学者たちの考え方を一括してスウェーデン学派と呼ぶことが多い。J.G.K.ウィクセル,G.カッセルなどストックホルムを中心として活躍した経済学者たちの流れをくむ人々が多く,ストックホルム学派Stockholm school,あるいは北欧学派と呼ばれることもある。 ウィクセルは,ワルラスの一般均衡理論に対して,ベーム・バウェルクなどのいわゆるオーストリア学派の経済学者の考え方を取り入れて,資本主義経済における経済循環の動学的な分析を展開した。…
※「北欧学派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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