思遣(読み)おもいやる

精選版 日本国語大辞典 「思遣」の意味・読み・例文・類語

おもい‐や・る おもひ‥【思遣】

〘他ラ五(四)〙
[一] (「やる」は追いやる、追放する意) 恋愛心配事などのため陥っている重苦しい気持を追い払う。気をはらす。心を慰める。憂いを紛らす。
万葉(8C後)一七・四〇〇八「天離る 鄙にはあれど 我が背子を 見つつしをれば 於毛比夜流(オモヒヤル) 事もありしを」
[二] (「やる」は遠くへ送る意) 眼前にない人や物に思いをはせる。
① 空間的に、また、時間的に、遠くのものをはるかに思う。想像する。推察する。
古今(905‐914)雑下・九八〇「思やるこしの白山知らねどもひと夜も夢にこえぬ夜ぞなき〈紀貫之〉」
② (人の身の上心情などについて)思い巡らす。気を配る。おしはかって気づかう。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「あひ見むことのかたき道に出で立つ。父母・俊蔭、悲しびおもひやるべし」

おぼし‐や・る【思遣】

〘他ラ四〙 (「おもいやる(思遣)」の尊敬語)
[一] (「やる」は追いやる意) 悩ましい気持をお晴らしになる。心をお慰めになる。
源氏(1001‐14頃)夕顔「われひとりさかしき人にておぼしやるかたぞなきや」
[二] (「やる」は遠くへ送る意) 目の前にない人や物に思いをはせられる。
① 遠くのものをはるかにお思いになる。想像なさる。
落窪(10C後)四「人々の装束、木丁、屏風より初めて、只おぼしやれ」
② (人の身の上、心情などについて)思いめぐらされる。おしはかって同情なさる。
多武峰少将物語(10C中)「ましてかかる物思ひ添ひて侍れば、おぼしやれ」

おもい‐やり おもひ‥【思遣】

〘名〙
① 推察。想像。思慮分別
蜻蛉(974頃)上「奥山の思ひやりだに悲しきにまたあまぐものかかるなになり」
※枕(10C終)八七「上もきこしめして『いと思ひやり深くあらがひたる』など」
② 人の身の上や立場、心情などについての察し。察していたわりの気持をもつこと。また、その気持。
※落窪(10C後)三「おのが心本性立腹に侍りて、思ひやりなく物いふ事もなん侍るを」
※源氏(1001‐14頃)末摘花「わりなの、人に恨みられ給ふ御よはひや。おもひやり少なう、御心のままならむもことはり」

おもい‐おこ・す おもひ‥【思遣】

〘他サ下二〙 思いをこちらによこす。こちらの方を気づかい思う。
※源氏(1001‐14頃)賢木「鈴鹿川八十瀬の浪にぬれぬれず伊勢まで誰かおもひをこせむ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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