日本大百科全書(ニッポニカ) 「田村栄太郎」の意味・わかりやすい解説
田村栄太郎
たむらえいたろう
(1893―1969)
近代の民間史家。群馬県高崎の人力車宿の子として生まれる。高崎商業を卒業、社会運動に参加。30歳を過ぎてから家業を捨てて上京、以後在野の研究生活に徹した。研究は農民一揆(いっき)、交通、風俗、工業、人物史にわたり、時代も幅広いが、主として江戸時代の古文書解釈を基礎にする著作で大きな業績を残した。歴史の本体は民衆であるという立場と生活・生産を営む郷土の歴史の集積が日本史であるという立場から歴史を理解し、日本史のなかの不平等と平等の問題に終生焦点をあてた。著書『日本農民一揆録』『一揆・雲助・博徒』『日本工業文化史』『近世日本交通史』『やくざの生活』『日本風俗史』『世直し』など。
[深谷克己]
『歴史科学協議会編『現代歴史学の青春』(1980・三省堂)』▽『永原慶二・鹿野政直編『日本の歴史家』(1976・日本評論社)』