アイゼンク(読み)あいぜんく(その他表記)Hans Jürgen Eysenck

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイゼンク」の意味・わかりやすい解説

アイゼンク
あいぜんく
Hans Jürgen Eysenck
(1916―1997)

ドイツ生まれのイギリス心理学者。第二次世界大戦中の神経症の研究が注目された。1955年ロンドン大学教授になり、モーズレイ病院の心理学研究室の主任となった。パーソナリティーに関する因子分析的研究とヨーロッパの性格類型学を結び付けた『自己発見の方法』(1976)がある。心理学臨床の方法として、心理テスト行動療法を開発したことでも知られる。1996年の国際心理学会(モントリオール)で、喫煙肺癌(がん)に関する長期的研究の成果として、その単純な因果関係を否定し、ストレスの介在によってのみ癌との相関があることを報告して話題になった。

[本明 寛]

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改訂新版 世界大百科事典 「アイゼンク」の意味・わかりやすい解説

アイゼンク
Hans Jurgen Eysenck
生没年:1916-97

ベルリンに生まれ,後年イギリスに帰化した心理学者。イギリスにおける臨床心理学発展を推進し,世界的には行動療法を提唱し,その研究にも中心的役割を果たしている。精神分析的人格研究には猛烈な反対者だが,実験科学的人格研究の推進者である。彼のいう内・外向性と神経症的傾向の2軸をもとにして〈モーズリー性格検査MPI)〉が作られた。彼は永年の研究の中から三つの人格モデルを構築した。すなわち(1)心理学実験,精神医学的評定,因子分析などから導かれる純粋に記述的なモデル,(2)実験心理学でいう操作概念と関連づけるモデル,(3)情動・賦活・覚醒水準など生理学的指標と心理学的概念の間の関係を頭においたモデルである。主著《人格の構造--その生物学的基礎》(1967)ほか。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイゼンク」の意味・わかりやすい解説

アイゼンク
Eysenck, Hans Jurgen

[生]1916.3.4. ベルリン
[没]1997.9.4. ロンドン
イギリスの心理学者。イギリスに定住するまでドイツ,フランスで教育を受け,1955年ロンドン大学教授。パーソナリティ,異常心理,臨床心理の実験的研究,条件づけ理論に基づく行動療法の推進者。主著『心理学の効用と限界』 Uses and Abuses of Psychology (1957) ,『行動療法と神経症』 Behaviour Therapy and the Neuroses (60) ,"The Structure of Human Personality" (53) 。

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世界大百科事典(旧版)内のアイゼンクの言及

【行動療法】より

…行動療法という用語はアメリカのリンズリーO.R.Lindsley,スキナー,ソロモンH.C.Solomonらが精神病者にオペラント条件づけ技法を適用した報告(1953)にはじめて現れた。そして従来の業績を集大成したアイゼンク編著の《行動療法と神経症》(1960)により行動療法なる語が世界的に広まった。 ロシアのベフテレフV.M.Bekhterevが精神医学的方法では治療困難であったヒステリー性聾の1患者を条件反射技法で全治させたとの症例報告(1912)が行動療法の最初である。…

【性格】より

…これに対しキャッテルR.B.Cattelの定義は〈人格とは人がある状況に置かれたとき,その人がどうするかを予測させるものである〉とする操作的なものである。アイゼンクは因子分析的・統計的方法を用いた人格研究を行っている。 発達段階による性格研究は精神分析に関連するもので,S.フロイトがその基礎を確立している。…

【政治意識】より

…それは年齢や社会構造に応じての気質や性格の変化と結びつけることによって,さまざまな類型論を生んでいる。それらの中でも,W.ジェームズの〈かたい心〉〈やわらかい心〉と急進・反動型,保守・漸進型を結びつけたローエルAbbort L.Lowellの類型論は,その後,H.J.アイゼンクによって調査データの因子分析による裏付けをえて,広く用いられている。S.フロイトは,このような性格の形成をリビドー(性衝動)の発達と下意識の抑圧構造と結びつけ,政治意識の解釈に新しい領域を開いた。…

※「アイゼンク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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