ホッケ(海水魚)
ほっけ /
Atka mackerel
arabesque greenling
[学] Pleurogrammus azonus
硬骨魚綱カサゴ目アイナメ科に属する海水魚。北海道近海に多いが、樺太(からふと)(サハリン)、沿海州、千島列島(ちしまれっとう)から三重県、対馬海峡(つしまかいきょう)、黄海(こうかい)まで分布する。「北方」または「北魚」と書いてホッケと読むこともある。アイナメに近縁であるが、第1背びれと第2背びれの境がなく、尾びれは深く二叉(にさ)することで異なる。産卵期は9~12月で、北方ほど早い。体色は雄が青っぽく、雌は茶色っぽくなり、水深20メートル以浅の岩礁域に群泳してきて、岩の裂け目や石のすきまに4000粒ほどの卵を直径5センチメートルぐらいの塊にして産む。卵は桃色、青色、緑色など変化に富む。雄は卵塊に海水を吹き付けて世話し、敵から卵を保護する。雌は1産卵期に数回に分けて産卵する。
幼魚はアオホッケとよばれ、コバルト色で海面に群れをなしているが、しだいに体色は灰色に変わり、満1年で海底生活に入る。このころのものはロウソクボッケとよばれ、底引網で多量に漁獲され、養殖ウナギの餌(えさ)として重宝がられる。ハルボッケとよばれるものは2年魚で25センチメートル前後になり、4、5月ごろに餌のプランクトンを求めて濃密な群れをなし、表層に浮上する。これを巻網で漁獲するのでマキボッケともいう。成魚は魚類、イカ類、エビ類など何でも食べる。大きさによって中ボッケ、大ボッケなどとよんで区別する。そのうち、海底の岩礁にすむようになったものをネボッケ、タラの漁場に滞留したものをタラバホッケとよぶ。寿命は7、8年で、体長は50センチメートルほどになる。
従来、ニシンの天敵とされていたが、ニシンが不漁になった結果、その価値は著しく増大した。成長段階で生態や漁場が違うので、漁具もそれにあった延縄(はえなわ)、外建網、刺網(さしあみ)などを用いる。干物、塩蔵品などのほか、練り製品などの材料にされる。脂肪分が多くて味が変わりやすい。アニサキスが寄生していることが多いので、刺身は危険である。近縁種にキタノホッケがある。
[尼岡邦夫]
ホッケ(Gustav René Hocke)
ほっけ
Gustav René Hocke
(1908―1985)
ドイツの批評家、作家。ベルギーのブリュッセルに生まれる。批評家E・R・クルチウスに師事したのちジャーナリストとなり、1949年以来ドイツの新聞通信員としてローマに在住した。クルチウス直伝の文献学的方法に独自の精神史的観点を導入し、文学・美術におけるマニエリスム研究に一時期を画す。代表的作品に、マニエリスム研究三部作とも称すべき『迷宮としての世界』(1957)、『文学におけるマニエリスム』(1959)、『ヨーロッパの日記』(1963)がある。
[池田紘一]
『種村季弘・矢川澄子訳『迷宮としての世界』(1967・美術出版社)』▽『種村季弘訳『文学におけるマニエリスム』Ⅲ(1969・現代思潮社)』▽『種村季弘訳『絶望と確信――20世紀末の芸術と文学のために』(1977・朝日出版社)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ホッケ
Pleurogrammus azonus
カサゴ目アイナメ科の海産魚。英名はAtka mackerel(アッカのサバ)という。北海道に多いが,南サハリンから対馬海峡付近および茨城県まで分布する。全長40cmくらいになる。背びれの棘条(きよくじよう)と軟条部の間に切れ込みがなく,尾びれが2叉し,側線が5条あることが特徴。体色は暗黄色か暗緑色。ホッケに〈𩸽〉の字が当てられるのは幼魚が鮮やかな緑色で美しいからである。産卵期には雌雄に唐草模様が生じ,また地色も異なるようになる。産卵期は秋から冬で,石の隙間や岩の裂け目に卵を産む。幼魚はアオボッケといわれ表層に群れるが,満1年になるとローソクボッケといわれ海底生活に入る。2年魚はハルボッケともいわれ,春に濃密な群れをつくって海面を泳ぐ。成魚はネボッケ(タラバボッケ)と呼ばれ,沖合の岩礁地帯に根づく。寿命は6~7年。餌は成長段階により異なる。巻網,刺網,はえなわ,底建網で漁獲される。昔はニシンの天敵とされ価値は低かったが,現在では塩干品やかまぼこの材料として重宝される。
執筆者:谷内 透
ホッケ
Gustav René Hocke
生没年:1908-87
マニエリスム研究で知られるドイツの批評家,作家。ベルギーのブリュッセルに生まれ,E.R.クルティウスに就いて哲学博士号を取得した。1940年以降新聞社のローマ派遣員となり,イタリア南部に残るギリシア文化に開眼。第2次大戦後相ついで公刊された2冊のマニエリスム研究書《迷宮としての世界》(1957),《文学におけるマニエリスム》(1959)は,M.ドボルジャークの《精神史としての美術史》並びにクルティウスの《ヨーロッパ文学とラテン的中世》の系譜を継ぐ,16,17世紀マニエリスム文学芸術研究として高い声価を得た。著書はほかに《マグナ・グラエキア》(1960),《絶望と確信》(1974),《ネオマニエリスム--シュルレアリスムから瞑想に至る現代絵画の道》(1975)など。
執筆者:種村 季弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ホッケ
Pleurogrammus azonus
カサゴ目アイナメ科の海水魚。全長 60cm内外。体は長紡錘形で深く二叉した尾鰭をもつ。眼の上方に 1本,その上後方に 2本の皮弁がある。5本の側線をもち,鱗は小さく,櫛鱗。体は暗褐色で下方は淡く,体側に暗色の横帯がある。産卵期(9月~2月)に雄はコバルト色に鮮黄色の斑紋がある婚姻色を現す。茨城県・長崎県の対馬海峡以北,黄海,オホーツク海,千島列島周辺に分布する。美味である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ホッケ
ドイツの批評家,作家。ベルギー,ブリュッセル生れ。ベルリン,ボンの各大学に学び,後者でE.R.クルティウスに師事した。ロマンス語研究から一転,1940年以降はイタリアにあって新聞社通信員を務めつつ文筆活動。2冊のマニエリスム論《迷宮としての世界》(1957年)と《文学におけるマニエリスム》(1959年)は,師の学風を継ぎ,マニエリスムを古典主義の硬直に絶えず対抗する歴史的常数ととらえる野心作で,その復権に大いに寄与した。ほかに《絶望と確信》《ヨーロッパの日記》,小説《マグナ・グラエキア》など。
ホッケ
アイナメ科の魚。幼魚をアオボッケ,若魚をロウソクボッケという。成魚は全長40cm。北海道に多いが,南サハリンから対馬海峡付近および茨城県まで分布する。幼魚は表層にすんで体色は青みを帯びるが,成長につれて底にすむようになり,褐色を帯びてくる。昔はニシンの天敵とされ価値は低かった。しかし現在では産額はかなり多く,鮮魚として用いられるほか,塩ホッケ,練製品の材料などにされる。
→関連項目ギンダラ
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ホッケ[水産]
ほっけ
北海道地方、北海道の地域ブランド。
主に稚内市・小樽市などで水揚げされている。カサゴ目アイナメ科の魚で、全長は約50cmほど。主として真ホッケと、単にホッケと呼ぶシマホッケがあり、真ホッケのほうが味も質も上とされる。北海道の沿岸では5月〜7月と11月に多く漁獲されるが、旬は5月から7月にかけて漁獲されたもの。開きほっけは、北海道を代表する干物の一つである。塩焼きやフライ、チャンチャン焼きなどの調理方法がある。
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
ホッケ
[Pleurogrammus azonus].カサゴ目アイナメ亜目アイナメ科の海産魚.50cmほどになる.食用にする.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のホッケの言及
【映画】より
…例えば《残酷物語》(1883)の中の〈天空広告〉という短編では,まだ幻灯機も珍しかった時代に,天空をスクリーンとする壮大な〈映画〉を予見している。 〈映画〉はそもそも〈有用なものと快適なものとをごっちゃにし,遊びながら人間の本当の顔を開示する〉とG.R.ホッケが定義した,〈魔術師〉たちの〈遊戯機械〉〈悪魔の発明〉であったのである。
【映画の誕生】
《映画の考古学》の著者C.W.ツェーラムは,映画の誕生を次のようにいっている。…
【マニエリスム】より
…[E.R.クルティウス]は美術史との対照を抜きにして,古代末期,16~17世紀,20世紀に主要な頂点を有する反古典的文学傾向を指す常数としてこの概念を使用し,ソフォクレス,ウェルギリウス,ラシーヌ,ゲーテの名を挙げて,語順転倒,奇妙な隠喩,同音異義語による言葉遊び等の技巧からなる装飾過剰の文体を,マニエリスムの特徴と規定した。他方,[G.R.ホッケ]はこの師の精神史理論を社会心理学の方向へ組みかえ,幻想,偏執,神秘,奇怪といった特色を帯びた文化現象全体をマニエリスムと規定し,古典主義との関係では,対立よりも共存と補完性を強調し,その詩人としては,ゴンゴラ,マリーノ,ドービニェ,ランボー,マラルメ,ブルトン,シェークスピア,ダン,イェーツ,ツェラーンを挙げる。定義が膨張するにつれてバロックとの区別が問題となるが,M.レーモンはマニエリスム対バロックを技巧性対表現性,装飾性対機能性,偏心性対統一性,幻想の夢幻的表出対幻想の現実的表出,文人向き対大衆向きという基準で考え,混乱の収拾をはかった。…
※「ホッケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」