ポランニー(読み)ぽらんにー(英語表記)Karl Polanyi

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポランニー」の意味・わかりやすい解説

ポランニー(John Charles Polanyi)
ぽらんにー
John Charles Polanyi
(1929― )

カナダ化学者。ドイツのベルリンに生まれる。父は物理化学者(のち社会科学者)のミヒャエル(マイケル)・ポランニー、伯父(おじ)は経済学者のカール・ポランニーである。1933年イギリスに移住マンチェスター大学で化学を学び、1949年に卒業、1952年同大学で博士号を取得した。その後、カナダ国立研究評議会研究所の研究員、プリンストン大学の研究助手を経て、1957年トロント大学の助教授となり、1960年準教授、1962年教授に昇格した。カナダ自然科学者・人文科学者委員会の設立メンバーで、その委員長も務めている。また1989年(平成1)から1992年まで岡崎国立共同研究機構分子科学研究所の名誉顧問を務めた。

 ポランニーは、化学反応がどのような力によって引き起こされるかを研究した。気体放電によって、水素原子と塩素分子から塩化水素が生じる化学反応を詳細に調べた結果、反応のエネルギーが分子の振動および回転の形に蓄積される割合の測定に成功した。この化学ルミネセンスを用いた測定値はD・R・ハーシュバックとY・T・リーが研究を進めていた分子線交差法による測定値と一致していた。彼の化学ルミネセンスの研究は、のちに化学レーザーを生み出す基礎理論となった。ポランニーは、ハーシュバックおよびリーとともに「化学反応の素過程の動力学的研究」に貢献したとして、1986年のノーベル化学賞を受賞した。

[編集部 2018年11月19日]

『J・I・スタインフェルド他著、佐藤伸訳『化学動力学』(1995・東京化学同人)』


ポランニー(Michael Polanyi)
ぽらんにー
Michael Polanyi
(1891―1976)

ハンガリーの物理化学者、社会科学者。ブダペストの生まれ。経済人類学者カール・ポランニーの弟。息子は化学者のジョン・ポランニー(1986年ノーベル化学賞受賞)。1917年にブダペスト大学で博士号を取得後、ベルリンのカイザー・ウィルヘルム研究所(現、マックス・プランク研究所)所員となる(1923~1933)。1933年にナチスの人種迫害を避けてイギリスへ渡り、マンチェスター大学の物理化学教授となる。その後、社会科学に移り、1948年に同大学の社会科学教授、1959年にオックスフォード大学の主任研究員を歴任した。おもに、結晶構造や反応速度論の研究を行った。社会科学に移ってからは、妖術(ようじゅつ)や呪術(じゅじゅつ)を対象とし非合理的な主張をなした。おもな著書には『原子反応』(1932)、『Personal Knowledge』(1958)、『人間の研究』(1959)、『暗黙知の次元』(1966)、『知と存在』(1969)などがある。

[川野辺渉 2015年11月17日]

『佐藤敬三訳『暗黙知の次元』(1980・紀伊國屋書店/高橋勇夫訳・ちくま学芸文庫)』『沢田允夫・吉田謙二他訳『人間の研究』(1986・晃洋書房)』『大塚明郎・栗本慎一郎他著『創発の暗黙知――マイケル・ポランニーその哲学と科学』(1987・青玄社)』


ポランニー(Karl Polanyi)
ぽらんにー
Karl Polanyi
(1886―1964)

ハンガリー生まれの経済学者。主としてアメリカで活躍。ブダペスト大学その他で哲学と法学を学び、第一次世界大戦後ウィーンで雑誌の編集に従事。ナチスに追われてイギリスに移り、オックスフォード大学の課外活動常任委員会の講師その他を経てコロンビア大学客員教授となり、経済史を講義。物資の交換形態として、互酬性、再分配、(市場)交換の3様式を摘出し、交換形態の分析により、近代の市場経済社会と、その他の非市場社会とを同時に扱うことを可能にした。近代西欧の市場経済が人類史上、特殊であることを示し、経済人類学の発展に多大の貢献をした。主著として『大転換』(1944)、『ダホメと奴隷貿易』(1966/邦訳名『経済と文明』)などがある。なお、物理化学者、社会科学者のミヒャエル(マイケル)・ポランニーは弟、化学者のジョン・ポランニー(1986年ノーベル化学賞受賞)は甥(おい)である。

[豊田由貴夫 2019年1月21日]

『栗本慎一郎・端信行訳『経済と文明』(1975・サイマル出版会/ちくま学芸文庫)』『吉成英成・野口建彦・長尾史郎・杉村芳美訳『大転換――市場社会の形成と崩壊』(1975・東洋経済新報社)』『玉野井芳郎・栗本慎一郎・中野忠訳『人間の経済』Ⅰ・Ⅱ(1998・岩波書店)』

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