日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクリルアルデヒド」の意味・わかりやすい解説
アクリルアルデヒド
あくりるあるでひど
acrylaldehyde
アクロレイン、プロペナールの別名をもつ低級不飽和アルデヒド。
グリセリンを硫酸水素カリウムと加熱して脱水すると生成する。工業的にはプロピレンをモリブデン・ビスマス系触媒を用いて接触酸化する方法により製造する。激しい刺激臭をもつ無色の液体で、揮発しやすい。非常に毒性が強く、目や鼻の粘膜、呼吸器、皮膚を刺激する。油脂やプラスチックなどが不完全燃焼したときに発生するほか、タバコの煙やディーゼルエンジンの排気ガスにも含まれる。空気中では容易に酸化され、光、空気、過酸化物により重合して樹脂状物質に変化するので、保存する際は空気を断って少量のポリフェノールを加えておく。還元するとプロピオンアルデヒドを経てプロピルアルコール(1-プロパノール)を生成し、酸化するとアクリル酸になる。臭素を作用させると容易に二重結合に付加して2,3-ジブロモプロピオンアルデヒドになる。アルデヒド基-CHOをもっているので、オキシムの生成、銀鏡反応を行う。
用途としては、アクリル酸、アクリロニトリル、アリルアルコール、グリセリンの合成原料になるほか、医薬品として用いられるメチオニンの原料としての需要がある。
[廣田 穰]