ポリフェノール(読み)ぽりふぇのーる(英語表記)polyphenol

翻訳|polyphenol

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポリフェノール」の意味・わかりやすい解説

ポリフェノール
ぽりふぇのーる
polyphenol

芳香族ヒドロキシ化合物のうち、ヒドロキシ基を2個以上もつものをいう。多価フェノールともいう。

河野友美・山口米子]

食品とポリフェノール

ポリフェノールは食品に含まれる色素やあくの成分、褐変反応の原因物質として知られている。色素にはアントシアンフラボノイドがある。アントシアンでは、たとえばナスの色素ナスニンやクロマメクリサンテミンは鉄やアルミニウムイオンと結合し、安定した青紫色になる。また、シソ、イチゴ、赤キャベツ、ビートの色素では酸性にあうと鮮紅色になる。フラボノイドでは、小麦粉やカリフラワーはアルカリ性にあうと黄色になり、酸性にすると白くなる。そのほか、タマネギ柑橘(かんきつ)類の白と黄色色素もフラボノイドに含まれる。あくの成分としては緑茶に含まれるカテキンと、コーヒー豆やゴボウなどに含まれるクロロゲン酸などのタンニン類がある。カテキンは渋味、クロロゲン酸は苦味があり、あくの成分ではあるが、同時に食品の風味をつくりだすものでもある。リンゴ、バナナ、ゴボウ、蓮根(れんこん)など、多くの食品では褐変反応が生じる。これは、ポリフェノールを含む食品には同時にポリフェノール酸化酵素が含まれ、この酵素が作用してメラニン様物質がつくられるためである。この褐変反応は酸や薄い食塩で酵素の働きを止めるか、あるいはビタミンCなどの還元剤を用いることで防止できる。

[河野友美・山口米子]

生理作用

フレンチ・パラドックスで有名になったのが、赤ワインに多く含まれるポリフェノールの生理作用である。赤ワインを飲んでいるフランス人は飲まない人に比べ動脈硬化が少ないのは、ポリフェノールの体内での抗酸化作用によるものとされている。同じように緑茶に含まれるカテキンの抗酸化作用など、ポリフェノールの活性酸素の除去による抗癌(がん)性といった生理作用が注目されている。

[河野友美・山口米子]

『梅田達也著『植物のくれた宝物――ポリフェノールのふしぎな力』(2001・研成社)』『近藤和雄著『からだに効く赤ワインの条件』(講談社プラスアルファ文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポリフェノール」の意味・わかりやすい解説

ポリフェノール
polyphenol

分子内に複数のフェノール性水酸基が結合したベンゼン環をもつ有機化合物の総称。多価フェノールともいう。必須アミノ酸の一つで,フェニルアラニンから生合成される。フラボノイド,イソフラボン,タンニンカテキン,ケルセチン,アントシアニン,ルチンなどが代表例で,植物の葉や花,樹皮などに成分として含まれる。1990年頃,フランス人は動物性脂肪を多量摂取するにもかかわらず,心筋梗塞や動脈硬化の患者が少ないという逆説的現象「フレンチパラドックス」の研究が始まり,フランス人が常飲する赤ワインに豊富に含まれるポリフェノールの効果が報告されたことで注目を集めた。(→フェノールワイン

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