改訂新版 世界大百科事典 「アサザ」の意味・わかりやすい解説
アサザ
floating-heart
Nymphoides peltata(Gmel.)O.Kuntze
池や沼に生え,横走する長い地下茎のあるミツガシワ科の多年生水草で,薬用植物。全株平滑,茎は細長く,根を泥中に下ろし,長い柄のある葉をまばらにつける。葉は水面に浮かび,広卵形から円形で径2.5~10cm,質はやや厚く,ふちに波状の刻みがあり,基部は深く2裂して,一部がわずかに癒合して,やや楯状に葉柄がつく。夏,長さ3~12cmの花柄のある淡黄色の花を水上に開く。萼は5裂し,裂片は長さ9~13mm。花冠は径3~4cm,5裂して裂片は凹頭でふちには長い毛がある。果実は狭卵形のBD果(さくか)で萼よりすこし長い。本州中部以西,四国,九州,さらにユーラシア大陸の温帯に広く分布する。植物体には,ケルセチン-3-ルチノシド(ルチン),サポニン,タンニンなどが含まれ,苦味がある。漢方で莕菜(こうさい)と言い,解熱,利尿,消痰の内服薬として用いられる。若葉は食用とされる。近縁種に,アサザより小さい白い花をつけるガガブタN.indica O.Kuntze,さらに葉も花も小型のヒメシロアサザN.coreana Haraがある。
執筆者:豊国 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報