ルチン(読み)るちん(英語表記)rutin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルチン」の意味・わかりやすい解説

ルチン
るちん
rutin

ビタミンP(名称は透過性permeabilityに由来する)の一つで、特殊な生理作用をもつフラボノイド。ただし、日本ビタミン学会ではビタミンPをビタミン様物質と規定している。分子式C27H30O16、分子量610.521。香料食物として有名なミカン科の常緑多年草ヘンルーダRuta graveolensから最初に得られたが、のちにマメ科のエンジュSophora japonicaの花蕾(からい)(生薬名(しょうやくめい)、槐花(かいか))、タデ科の一年草ソバFagopyrum esculentumなどからも単離され、自然界に広く分布している。自然界には糖またはウロン酸が糖以外の成分とグリコシド結合した低分子化合物があり、植物界に多くみられる。天然ルチンはアルコールには溶解するが水に不溶であるため、水溶性の糖化したα(アルファ)-グリコシル-ルチンが食品添加物として利用される。このグリコシドは加水分解によって糖と、クエルセチン、L-ラムノース、D-グルコース各1分子を生じる。ラムノース(1-6)グルコースをルチノースrutinoseと称する。おもな生理活性は毛細血管収縮作用であり、古来より止血薬として用いられてきたが、その作用は強くなく一過性である。また、毛細血管の抵抗力を高め、透過性の亢進(こうしん)を抑制する作用を示す代表的化合物である。毛細血管が弱くてもろいためにおこる出血性の病気の治療や予防に血管補強剤止血剤として用いられ、また高血圧や脳出血心悸(しんき)亢進や狭心症などにも用いられることがある。アメリカのFDA(食品医薬品局Food and Drug Administration)では無効とされているが、日本では血管壁に存在するヒアルロン酸を溶かしてその透過性を高めるヒアルロニダーゼの反応を阻止するとして、臨床的に用いられることがある。通常1日150~200ミリグラムを3回に分服する。ヒトに対して常用量では毒性はない。

[有馬暉勝・有馬太郎・竹内多美代]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ルチン」の意味・わかりやすい解説

ルチン
rutin

化学式 C27H30O16 。天然に広く存在するフラボン配糖体の一つ。最初ミカン科の植物ヘンルーダの全草から見出されたが,のちにエンジュのつぼみ,ソバの全草,タバコの葉,サンシキスミレの花,イチジク,アオギリの葉からも単離された。淡黄色針状晶,融点 177~178℃ (3水化物) ,190~192℃ (無水物) 。加水分解するとケルセチンとルチノース (ラムノースとグルコースから成る二糖) が得られる。血管強化作用をもっているので,脳溢血,肺出血,網膜出血の治療や予防に効果があるといわれる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android