改訂新版 世界大百科事典 「ニザーミーヤ学院」の意味・わかりやすい解説
ニザーミーヤ学院 (ニザーミーヤがくいん)
al-Madrasa al-Niẓāmīya
セルジューク朝の宰相ニザーム・アルムルクが自らの名を冠して設立した学院(マドラサ)。彼はイスマーイール派の活発な布教活動に対抗してスンナ派の神学と法学を振興させ,有能な官吏の養成を目的として1067年にバグダードに学院を設立したのをはじめとして,版図内の主要都市,たとえばニーシャープール,ヘラート,イスファハーン,メルブなどに同名の学院を設立し,教授陣の任免権を握った。アシュアリー派神学とシャーフィイー派法学を主要課目にハディース,文学などが教授され,イスラム文化の発達に大きく貢献した。とくにバグダードの学院はイスラム諸学の中心的な地位を占め,学生数は数千人に達したという。教授陣の中で神学教授であったガザーリーはとくに名高く,学生の中では後にムワッヒド朝の基礎を築いたイブン・トゥーマルトやイランの大詩人サーディーがよく知られている。バグダードの学院はセルジューク朝没落後,14~15世紀ごろまで存続した。
執筆者:黒柳 恒男
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