アマミノクロウサギ(読み)あまみのくろうさぎ(英語表記)Amami rabbit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマミノクロウサギ」の意味・わかりやすい解説

アマミノクロウサギ
あまみのくろうさぎ
Amami rabbit
Ryukyu rabbit
[学] Pentalagus furnessi

哺乳(ほにゅう)綱ウサギ目ウサギ科の動物。奄美(あまみ)大島と徳之島だけに分布する。1921年(大正10)に動物部門では第一号の国の天然記念物に、また1963年(昭和38)には特別天然記念物に指定された。岩の下や地中に穴を掘ってすむ。夜行性であるが、まれに日中でも森林茂みで観察されることがある。食物はシダススキ樹皮などの植物質のものである。飼育下では、奄美にはないリンゴを好んで食べる。10~11月と4~5月の年2回、育児巣の中に、赤裸で閉眼の子を1子、まれに2子産む。雌親と子がいっしょの場合以外は、巣の外で単独で行動する。短い後肢は急峻(きゅうしゅん)な山を登り降りするのに適する。移動するとき甲高い鳴き声を発するのが特徴的である。頭胴長44.5センチメートル。普通のウサギと比べて耳や鼻骨が短く、メキシコウサギアカウサギとともにムカシウサギ亜科に属する「生きた化石」的存在である。生息数5000と推定されるが、森林破壊などで絶滅が心配される。

[林 良博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマミノクロウサギ」の意味・わかりやすい解説

アマミノクロウサギ
Pentalagus furnessi; Amami rabbit

ウサギ目ウサギ科。体長 42~47cm。体の背面はこげ茶色。メキシコのメキシコウサギ,南アフリカのアカウサギとともにムカシウサギ亜科に属し,ウサギ科のなかで最も原始的な種の1つである。眼と耳は小さい。脚は短いが爪は強大で,穴を掘るのに適している。森林中の樹洞または土中の穴にすみ,夜行性。カシの実を好むが,雑草,樹皮,野菜なども食べる。奄美大島,徳之島にのみ分布し,特別天然記念物に指定されている。道路や林道の建設,シイ林の伐採によって生息地域がせばめられ,1997年絶滅危惧種にも指定された。

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