日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメマス」の意味・わかりやすい解説
アメマス
あめます / 雨鱒
[学] Salvelinus leucomaenis
硬骨魚綱サケ科イワナ属の魚。日本本土のイワナの基本型とみなされており、北日本、千島列島、樺太(からふと)(サハリン)、カムチャツカ半島、オホーツク海方面から朝鮮北部にわたって分布する。本州のイワナとの分布境界は明確でないが、太平洋側では三陸沿岸、日本海側では秋田県沿岸の河川と推測される。背部は紫色を帯びた緑褐色、腹面は白または黄白色で背面から体側に小白斑(はくはん)が散在する。幼魚には体側に小判形のパーマークとよばれる斑紋がある。北海道ではおもに生後3年目のものが銀白化し、背びれ、尾びれの末部が黒化し、体側の円斑は目だって大きくなり、5~6月降海して沿岸で生育する。8~9月ごろから遡河(そか)するが成熟せず、冬季、ふたたび降海するものが多い。この川と海の往復を反復して成熟し、9~10月上流域の平瀬に産卵する。大形のものは60センチメートルを超す。上流域のイワナ型のものは渓流釣りの対象となるが、下流の降海型を主とする大形のものはサケの稚魚の害魚とされる。なお、北海道では湖沼型や河川型の魚を単にイワナおよびエゾイワナとよぶことがある。
[久保達郎]