アメマス(その他表記)whitespotted char
Salvelinus leucomaenis

改訂新版 世界大百科事典 「アメマス」の意味・わかりやすい解説

アメマス
whitespotted char
Salvelinus leucomaenis

サケサケ科イワナ属の魚。イワナの降海型とする説とエゾイワナの降海型とする説がある。背は黄褐色,体側には瞳孔径大から眼径大の大小の白色斑点が不規則に散在している。稚魚期および降海時には背びれ尾びれの先端部に明らかな黒斑をもつのが,イワナとの大きな相違点である。降海時には体色は銀白色をなす。北に生息するものほど降海型になる割合が多い。日本では,北海道と本州の日本海側では追良瀬川,太平洋側では北上川以北に分布する。海洋生活1~2年後に8月下旬から11月下旬にかけて,水温が9~10℃になるころ上流域に遡上(そじよう)し砂れき底に産卵する。遡上は夜陰とくに降雨時の暗夜に好んで行われる。孵化(ふか)後は水生昆虫などを餌として成長し,1~2年後,体長約17cmころに4月から6月の夜半に降海する。降海型は陸封型に倍し60cmにもなる。釣りの対象となるがあまり美味ではない。北海道では,サケなどの卵や稚魚を食害するので害魚として扱われている。
イワナ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アメマス」の意味・わかりやすい解説

アメマス
あめます / 雨鱒
[学] Salvelinus leucomaenis

硬骨魚綱サケ科イワナ属の魚。日本本土のイワナの基本型とみなされており、北日本、千島列島樺太(からふと)(サハリン)、カムチャツカ半島、オホーツク海方面から朝鮮北部にわたって分布する。本州のイワナとの分布境界は明確でないが、太平洋側では三陸沿岸、日本海側では秋田県沿岸の河川と推測される。背部は紫色を帯びた緑褐色、腹面は白または黄白色で背面から体側に小白斑(はくはん)が散在する。幼魚には体側に小判形のパーマークとよばれる斑紋がある。北海道ではおもに生後3年目のものが銀白化し、背びれ、尾びれの末部が黒化し、体側の円斑は目だって大きくなり、5~6月降海して沿岸で生育する。8~9月ごろから遡河(そか)するが成熟せず、冬季、ふたたび降海するものが多い。この川と海の往復を反復して成熟し、9~10月上流域の平瀬に産卵する。大形のものは60センチメートルを超す。上流域のイワナ型のものは渓流釣りの対象となるが、下流の降海型を主とする大形のものはサケの稚魚の害魚とされる。なお、北海道では湖沼型や河川型の魚を単にイワナおよびエゾイワナとよぶことがある。

[久保達郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アメマス」の意味・わかりやすい解説

アメマス
Salvelinus leucomaenis leucomaenis

サケ目サケ科の魚。背部や体側の白色斑が明瞭で,これらは成長につれて大きくなる。赤色斑はない。降海型(アメマス)と陸封型(エゾイワナ)がある。降海型は陸封型より大きく全長 70cm,陸封型は全長 40cmになる。降海型は孵化後 2~4年で海へ下る。産卵期は秋。サケ同様に上流までさかのぼり,産卵床をつくって産卵する。東北地方,北海道,朝鮮半島,沿海州(プリモルスキー地方),サハリン,千島列島からカムチャツカに分布する。

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百科事典マイペディア 「アメマス」の意味・わかりやすい解説

アメマス

サケ科の魚。イワナの降海型とする説と,エゾイワナの降海型とする説がある。全長60cmに達する。背は黄褐色で,体側に白い斑点が散在する。稚魚期及び降海時に背びれと尾びれの先端部に大きな黒斑をもつのが,イワナとの違い。太平洋側では北上川以北,日本海側では追良瀬川以北に分布。8月下旬から11月上旬にかけて,上流域に遡上して産卵する。釣りの対象となるが,あまり美味ではない。北海道では,サケなどの卵や稚魚を食べるので,害魚扱いされる。

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世界大百科事典(旧版)内のアメマスの言及

【生物群集】より

…そして,理屈の上からも予想されるように,食いわければすみわける必要はなく,すみわければ食いわける必要はない。北海道にすむマス類のオショロコマとアメマスとヤマメとは,ふつう上流から下流へと順次互いにすみわけ,この場合にはどの種も水面から水底近くまでの餌のすべてを食う。しかし共存する場所では,1種は底近くの,1種は水中の,1種は水面の餌をねらい,食いわけを行う。…

※「アメマス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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