あやとり

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

あやとり
あやとり

1本の糸や紐(ひも)を輪にして両手に掛け、おもに指を使って糸のつくりだす形を変えていく遊び。「綾取り」などとも表記される。二人あるいは数人で互いに糸を取り合って、次々と形を変えていく「ふたりあや」や、「はしご(橋とも)」「ほうき(松とも)」など一人で形をつくりあげたり、手指や腕に絡めた糸を引き抜く手品のような遊び方がある。
 江戸時代の「あやとり」(江戸)、「いととり」(京、大坂)は、「ふたりあや」だけをさす呼び名であったが、今はこの糸遊びの総称となっている。三都以外の地方には「ちどり、たすきどり、かせとり、とりこ」などいろいろな呼び名があった。「あやとり」の語源については諸説あるが、「あや(綾、文)」には「X状に交差した形」の意味があり、「ふたりあや」で二本の糸の交差を取り上げることに由来するという説が有力である。
 あやとり紐には、麻糸、木綿糸、毛糸などが使いやすい太さにして用いられてきた。裕福な家庭の子女が、組紐のような太さのある紐で遊んでいたことは、江戸中期以降の木版絵本や錦絵(にしきえ)などにみえる。彩りの美しい紐で楽しむ「ふたりあや」は日本人好みの優雅な遊びのイメージでとらえられ、日本固有の遊びと思われがちであるが、実際には広く世界に分布している。
 1880年代からの調査で、世界各地で3000種を超えるあやとりが伝承されていることが明らかになった。大昔、人間が紐類を手にしたときから、自然発生的にあやとりが始められたと考える研究者もいる。「ふたりあや」はアジアや欧米で、「はしご」は世界各地で、どちらもさまざまな呼び名で知られており、その発祥地は不明である。
 日本のあやとりの起源を古代の宮中の神事や風習に求める傾向があるが、今のところ、江戸時代以前にあやとりが存在したことを示す証拠は発見されていない。海外のあやとりの場合は、オーストラリアや北米の先住民の儀式のなかで大人が神話の一節を歌い語りながらあやとりをしたり、パプア・ニューギニア先住民や極北地方のイヌイットが呪術(じゅじゅつ)目的のあやとりを伝えていた例がある。
 世界各地のあやとりがインターネット上で見られる時代となり、一人で取り方を習得することもできるようになった。しかし、この遊びのベースには、家族・友人だけでなく初対面の人であっても、取り方を教え教わるうちに互いに打ち解けていく心の交流の喜びがある。小学校の昔遊びの時間のような、人から人へじかに伝える機会を増やすことが、この糸遊びの存続の鍵(かぎ)を握っている。[シシドユキオ]
『シシドユキオ、野口廣、マーク・A・シャーマン著『世界あやとり紀行――精霊の遊戯』(2006・INAX出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラスの解説

あやとり

けん玉の技のひとつ。玉を持ってけんを引き上げ、指で作った糸の輪に中皿を通してけんをぶら下げる。難易度の高い技。2000年、日本けん玉協会により「けん玉の技百選」に選定。

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