家庭医学館 の解説
あるこーるによるこころのびょうき【アルコールによる心の病気 Alcohol-Related Disorders】
アルコールによる心の病気には、誰でもなりうる急性アルコール中毒のほか、飲酒をやめられなくなって、さまざまのアルコール関連障害と社会的不利・不適応を現わすアルコール依存症、多量のアルコールを長期間飲んでいる人に生じるアルコール離脱症候群(りだつしょうこうぐん)、幻覚(げんかく)などの精神症状やけいれん発作(ほっさ)を現わすアルコール精神病、物忘れなどの記銘力障害をおこすアルコール性コルサコフ症候群、認知症をおこすアルコール性認知症などがあります。
アルコールを摂取すると、少しの量ならば、誰でも気分がほぐれて陽気になり、おしゃべりになったりします。少し量が増えると眠けがさしたり、愚痴(ぐち)っぽくなり、歩行時にふらふらしたりもします。そして、大量のアルコールを短時間に摂取して、意識が混濁(こんだく)して人事不省(じんじふせい)におちいると、急性アルコール中毒と呼ばれます。
アルコールは依存をおこしやすい物質で、くり返し乱用してやめられなくなることをアルコール依存症といいます。アルコール依存症の人は、ひどいときにはしじゅうアルコールを飲み、飲みつぶれて眠り、目が覚めればまた飲む、という連続飲酒状態におちいる場合があります。
一方、いつも多量のアルコールを飲んでいる人(とくに連続飲酒をしている人)がなんらかの理由で急にアルコールを飲めなくなると、手が震(ふる)えたり幻覚(げんかく)に悩まされたり、おかしな言動をしたり、けいれんをおこしたりする状態におちいることがあります。これをアルコール離脱症候群と呼びます。
また、過量の飲酒が長期間におよぶと、嫉妬妄想(しっともうそう)などの精神病症状が現われたり、脳萎縮(のういしゅく)が進行して認知症におちいる場合があります。
[治療]
急性アルコール中毒の治療としては、輸液(ゆえき)(点滴注射)と利尿薬(りにょうやく)の使用により、アルコールの体外への排出を促す方法がとられます。一般病院と精神科病院のどちらでも受診が可能です。
アルコール依存症の心身両面からの総合的な治療は、精神科病院、断酒会やAAなどの自助組織(コラム「AA(酒害者匿名会)/断酒会」)、地域社会(保健所ほか)の連携により行なわれます。
しかし、それにもまして、アルコール依存者本人の、アルコールを断つという治療意欲が不可欠です。
アルコール依存者の家族は、これらの各機関とよく相談し、本人を治療プログラムへ導き、治療から脱落しないように配慮する必要があります。
また、アルコールに関連した身体合併症(肝機能障害(かんきのうしょうがい)、急性(きゅうせい)・慢性膵炎(まんせいすいえん)、糖尿病、ビタミン欠乏症(けつぼうしょう)ほか)を注意するためには、一般病院もしくは精神科病院の内科医の診療を受けることも必要となります。