日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルノーゲン」の意味・わかりやすい解説
アルノーゲン
あるのーげん
alunogen
含水硫酸アルミニウムの鉱物。形態は多く繊維状で、その微結晶からなる皮膜や塊状集合をなす。可溶性。水に溶けて再結晶を繰り返すと、aあるいはb軸方向に伸びた柱状結晶となるが、乾燥気候地帯でしか見られない。
風化された黄鉄鉱などを含む泥岩の表面や、黄鉄鉱を含む硫化物鉱床の酸化帯に生成され、また石炭層の分解物として、あるいは比較的低温の噴気作用や温泉作用の産物として生成される。日本では神奈川県足柄下(あしがらしも)郡箱根町大涌谷(おおわくだに)で火山噴気作用の産物として産し、長野県長野市鬼無里(きなさ)では凝灰岩の表面に産する。金属鉱床の酸化帯では秋田県鹿角(かづの)市尾去沢(おさりざわ)鉱山(閉山)から報告されている。舎利塩epsomite(化学式Mg[SO4]・7H2O)、苦土毛礬(くどもうばん)pickeringite(MgAl2[SO4]4・22H2O)、石膏(せっこう)などとともに産する。
同定は繊維状の形態。非常に低い硬度。可溶性。苦土毛礬や毛礬はより繊維が長くなる。これら二種は繊維の表面がやや平滑で絹糸光沢が強い。なめるとこれらは苦いが、味で区別するには微量のものを水に溶かして比べないとわからず、純粋な試料を用意する必要がある。英名はラテン語のalumen(ミョウバン)とギリシア語のgenos(製造)を結合させたもの。
[加藤 昭 2015年12月14日]