日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルモヒドロカルサイト」の意味・わかりやすい解説
アルモヒドロカルサイト
あるもひどろかるさいと
alumohydrocalcite
カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の含水炭酸塩鉱物。形態は針状で、これが球顆(きゅうか)状集合をなす。また堆積(たいせき)岩中に細脈をなす。低温アルカリ性でアルミニウムイオンおよび炭酸イオンを含む水溶液と石灰質堆積岩の反応、あるいはカルシウムイオンに富む水溶液と粘土岩あるいは変質岩との反応によって生成される脈鉱物あるいは変質鉱物。超塩基性岩中に脈をなすこともある。この場合は多く含Cr(クロム)相となる。堆積岩中に脈をなし、また特殊な堆積岩の成分鉱物をなすこともある。緑色岩の空隙(くうげき)に産することもある。
日本では大阪府貝塚市蕎原(そはら)の泥質堆積岩中に白色細脈をなして産し、ドーソン石dawsonite(化学式NaAl[(OH)2|CO3])と共存する。また兵庫県養父(やぶ)市明延(あけのべ)鉱山では、鉱脈の母岩をなす緑色岩の空隙に微細な帯紫色の球状集合をなして産する。この産地のものは少量のCr2O3を含む。晶族が三斜晶系半面像に属し、本来の三斜晶系完面像とは異なるものをパラアルモヒドロカルサイトpara-alumohydrocalciteと称し、別種として区別する研究者もいる。共存鉱物として、アロフェン、カオリナイト、ギブス石、石膏(せっこう)、重晶石、蛇紋(じゃもん)石鉱物などのほか、非晶質二酸化マンガン物質を伴うことがある。同定は針状の輪郭が見えていれば、絹糸光沢と低い硬度、もろさなどによる。熱湯中で分解し、粉末状の方解石を分離し、水酸化アルミニウムの懸濁(けんだく)溶液ができる。これに酸を加えると、溶液は透明になり、粉末は発泡する。成分にちなんで命名された。
[加藤 昭 2015年12月14日]