日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオニア海」の意味・わかりやすい解説
イオニア海
いおにあかい
Iónion Pelagos
地中海中部の海域。東はバルカン半島南西部、西はシチリア島とカラブリア半島に接し、北はオトラント海峡によりアドリア海に通じる。英語名Ionian Sea。古称マレ・イオニウムMare Ionium(ラテン語)。古代ギリシア人はこの海をシチリア海とよび、イオニア海という呼称は、ローマによる征服ののち一般化した。南下するにしたがって水深が増し、最深部はペロポネソス半島南の4594メートル。海域東部のギリシア本土西岸沿いにイオニア諸島が並び、比較的雨量の多いこの地域では果樹栽培が盛んで、オリーブやぶどう酒が輸出される。古来、この海域は地中海の東西交通において重要な意味をもち、とくにケルキラ島(コルフ島)からオトラント海峡を横断してイタリア南岸に達する航路は、紀元前8世紀なかばに始まるギリシア人の植民運動にしばしば利用された。
[真下とも子]