イカサ(読み)いかさ(英語表記)Jorge Icaza

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イカサ」の意味・わかりやすい解説

イカサ
いかさ
Jorge Icaza
(1906―1978)

エクアドルの小説家。大学中退後、職を転々としながらも作家を志し、戯曲を数編発表したあと、短編集『山の泥』(1933)と、集団で動く没個性的なインディオ、彼らを直接監督する混血、その混血を支配するものの自らは外国資本に支配される白人、という三者三様の悲劇を描いた小説『ワシプンゴ』(1934)で原住民主義(インディヘニスモ)作家としての世界的名声を得る。その後も、伯父の大農園で過ごした少年期の体験を下敷きにして、エクアドルの抱える民族的、政治的問題を鋭く突いた一連の小説『街にて』(1935。アメリカ賞受賞)、『混血たち(チョーロス)』(1938)、『ワイラパムシュカス』(1948)をはじめ、数多くの作品を残した。

[安藤哲行]

『伊藤武好訳『ワシプンゴ』(1974・朝日新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イカサ」の意味・わかりやすい解説

イカサ
Icaza, Jorge

[生]1906.7.10. キト
[没]1978.5.26. キト
エクアドルの小説家。 20世紀ラテンアメリカ文学の「土着文化派」を代表する小説『ワシプンゴ』 Huasipungo (1934) で有名。これは,外国資本と手を結ぶ白人 (地主たち) に虐待され,より有利な搾取の対象として,土地もろとも無産階級へと転落させられるラテンアメリカ先住民族インディオたちの悲惨な現実を描いた社会抗議の作品。ほかに『路上にて』 En las calles (35) ,『混血児』 Cholos (38) や,多くの短編がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android