トネリコ(読み)とねりこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トネリコ」の意味・わかりやすい解説

トネリコ
とねりこ / 土禰利古
[学] Fraxinus japonica Bl.

モクセイ科(APG分類:モクセイ科)の落葉高木。高さ6~15メートル。樹皮は滑らかで灰白色、枝は太い。葉は対生し、奇数羽状複葉で長さ20~30センチメートル。小葉は5~9枚、卵形または長楕円(ちょうだえん)形で長さ5~15センチメートル、先はとがり、縁(へり)に浅く切れ込む鋸歯(きょし)がある。裏面の主脈に開出した白毛があり、小葉が葉軸につく節に褐色の毛がある。雌雄異株。4~5月、枝先に円錐(えんすい)花序をつくり、細かい淡褐色の花を多数開く。花弁はなく、萼(がく)は4裂して小さい。雄花には雄しべ2本、雌花には雌しべ1本がある。果実は倒披針(ひしん)形で長さ3~4センチメートル、狭長な翼があり、垂れ下がる。山間の湿地に生え、中部地方以北の本州に分布する。北陸地方には、果実が細く、幅約5ミリメートルの近縁種ナガミトネリコがある。材は緻密(ちみつ)で強く、粘りがあるので、ラケットの枠など運動用具材に用いられ、農具の柄(え)、家具材ともする。北陸地方では、田の畦(あぜ)に稲架木(はさぎ)として植える。

 トネリコ属は約60種あり、北半球に広く分布する。日本には、ほかアオダモシオジヤチダモなどが分布する。

小林義雄 2021年7月16日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トネリコ」の意味・わかりやすい解説

トネリコ
Fraxinus japonica

モクセイ科の落葉高木。サトトネリコともいう。本州中部以北に広く分布し,庭木にも栽植されるが,水湿地を好むので田のあぜなどに植えられ,収穫した稲束を干すために利用されている (これを地方によっては稲架〈はさ〉と呼ぶ) 。葉は柄とともに長さ 20~30cmの奇数羽状複葉で対生し,5~7枚ある小葉は長卵形で鋸歯縁をもつ。春に,新葉の出る前の若い枝に,円錐花序をなして淡緑色の小花を多数つける。萼は4裂し,通常花弁を欠く。雌雄異花で,雌花にはめしべだけの花と,めしべのほかにおしべを1本もつ花とがあり,雄花はおしべ2本だけをもつ。果実は夏に熟し,細長い翼を1個もつ。樹皮は乾燥して消炎および解熱薬用とされる。また材は緻密で弾力に富むため,農具の柄,ステッキ,家具材,野球のバットなどに広く利用される。

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