シログチ(読み)しろぐち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シログチ」の意味・わかりやすい解説

シログチ
しろぐち
[学] Argyrosomus argentatus

硬骨魚綱スズキ目ニベ科に属する海水魚。中国に白姑魚(バイグーウイ)の名がある。本種はイシモチグチ、シラブなどとよばれることもあるが、和名ではクログチに対してシログチの名が与えられている。南シナ海から北日本にまで分布し、浅海の砂泥底に生息する。北限は太平洋岸では松島湾、日本海側では若狭(わかさ)湾。まれに青森県沿岸でも認められる。体はやや長く、側扁(そくへん)する。体色は銀白色で、鰓蓋(さいがい)部に大きい黒斑(こくはん)がある。下顎(かがく)の先端に頭部側線感覚系の3対の小孔があることが本種の特徴。また、口内が白いことでクログチ(口内が黒い)と区別される。産卵期は5~8月。東シナ海では1年で体長16センチメートル、2年で24センチメートル、3年で27センチメートルに成長し、極限体長は33.6センチメートル。食性は肉食性で、小魚テッポウエビシャコなどの表在性底生動物を捕食するが、胃の内容物中に占める魚類の比率は約25%である。本種はニベ類中ではキグチに次いで多く漁獲されてきたが、乱獲の影響で漁獲量は減少している。日本の沿岸では投げ釣りや船釣りでかかる。水揚げ場が消費地に近いときは鮮魚として利用されるが、おもにかまぼこ原料にされる。

[谷口順彦]

釣り

関東地方では、釣り人の間や市場ではイシモチとよばれることが多い。この釣りは、東京湾では魚の多い年には秋に乗合船が出る。2.4メートル級の竿(さお)に小型スピニング・リールをつけ、船用片天ビンを道糸に結ぶ。枝鉤(ばり)を2本か3本、さらに片天ビンからハリスを1本出す。または枝鉤3本の胴付き仕掛けで片天ビンを用いないこともある。餌(えさ)はゴカイ、アオイソメ。竿は軟調子のほうが食い込みがいい。

 千葉県九十九里浜、茨城県鹿島灘(かしまなだ)や福島県から宮城県にかけては海岸の投げ釣り。入梅ごろから晩秋がシーズン。3.6メートルから3.9メートル級投げ釣り用の竿で、オモリ負荷30号。胴付き三本鉤が標準で、餌はアオイソメ、アカイソメなど。海岸に寄せてくる波が、途中で波頭をつくり白く泡立つ所の海底は起伏の変化があり、ここが魚の群泳する好ポイントの目安となる。上げ潮、下げ潮でもポイントの距離が変わるので、海底の起伏をねらって丹念に探って釣る。潮が澄んでいるときは日没時から午後2時ごろまでか、夜明け前がいい。風や雨で潮に濁りが入れば昼でもいい釣果に恵まれる。

[松田年雄]

食品

肉は白身で味は淡泊である。水分が多いが、そのわりにタンパク質を多く含む。練り製品にすると弾力が強くなるので、おもにかまぼこの原料に用いられる。新鮮なものは刺身、塩焼き、煮つけにもする。中国ではよく使われる魚で、コイのかわりに丸揚げにして甘酢あんをかけたものは総菜としてしばしばつくられる。朝鮮では塩辛にしてキムチに使うことが多い。

[河野友美]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シログチ」の意味・わかりやすい解説

シログチ
Pennahia argentata

スズキ目ニベ科の海水魚。全長約 40cm。全身銀白色を帯びた淡灰色で,鰓蓋後部に黒色斑がある。体は側扁し,口は大きい。重要な底生魚資源の一つで,多くはかまぼこの原料になる。宮城県松島湾あたりから東シナ海,インド・太平洋に分布する。

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栄養・生化学辞典 「シログチ」の解説

シログチ

 →イシモチ

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のシログチの言及

【イシモチ(石持)】より

…この耳石は体の平衡を保ったり,音を感じとる役目をしている。別名のシログチまたはグチは,本種がうきぶくろを用いてグーグーという大きな音を出すことに由来するが,これはとくに産卵時に顕著である。体は銀白色で,えらぶたに大きな黒斑があることが特徴であるが,ときにきわめて薄くなることもある。…

※「シログチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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