日本大百科全書(ニッポニカ) 「イシビラメ」の意味・わかりやすい解説
イシビラメ
いしびらめ
turbot
[学] Scophthalmus maximus
硬骨魚綱カレイ目スコフタルムス科Scophthalmidaeに属する海水魚。黒海、地中海、ヨーロッパ沿岸から北海に分布する。日本にはいない。体は円形に近く、強く側扁(そくへん)しない。体長は体高の1.3~1.6倍。両眼は体の左側にあるヒラメ型である。目は小さく、両眼の間隔幅以下。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下またはそこを越える。側線は体の両側でよく発達し、胸びれの上方で強く湾曲する。体の両側に典型的な鱗(うろこ)がないが、多くの骨質突起がある。しかし数と大きさはさまざまで、ときにはない。背びれと臀(しり)びれは鱗で覆われていない。腹びれの左右の両基底は長く、無眼側の第1軟条は有眼側の第2軟条近くから始まる。有眼側の体色は灰色、淡褐色~濃褐色で、多くの斑点(はんてん)や斑紋がある。各ひれには多くの褐色斑点がある。水深70メートル以深の砂泥底にすみ、おもに小魚、甲殻類、二枚貝などを食べる。4~8月ごろに水深10~40メートルの沿岸に来て産卵する。仔魚(しぎょ)は約2.5センチメートルほどで目が移動する。最大体長は1メートルほどになる。釣り、トロール網、延縄(はえなわ)などで漁獲される。高級魚で水産重要魚種であるが、資源が減少しつつある。トルコでは人工孵化(ふか)をして、放流している。チリでは養殖されている。肉はよくしまり、刺身、蒸魚、煮魚、ムニエル、フライなどにすると美味である。近縁種のScophthalmus rhombusは英名Brillといい、体の両側に小さい円鱗(りん)があり、骨質隆起がないこと、背びれと臀びれに鱗で覆われた部分があること、背びれの前部鰭条(きじょう)は分枝することなどでイシビラメと区別できる。
[尼岡邦夫]