イチヤクソウ(読み)いちやくそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イチヤクソウ」の意味・わかりやすい解説

イチヤクソウ
いちやくそう / 一薬草
[学] Pyrola japonica Klenze

イチヤクソウ科(APG分類:ツツジ科)の多年草。地下に横走する長い根茎がある。葉は常緑で根際につき、広楕円(こうだえん)形で、質が厚く、縁辺に細鋸歯(さいきょし)がある。花茎は高さ15~30センチメートル、5~7月に白色ウメに似た5弁花が斜め下向きに開く。萼(がく)裂片は広披針(こうひしん)形で、先はとがる。花柱は長く花から抜き出る。丘陵帯から山岳帯の腐葉土が多い林内に生え、北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国に分布する。名は薬に用いるところからつけられたもの。イチヤクソウ属は、葉が根際につき長柄があり、花序の軸は無毛、花は総状でまばらにつく。世界に40種、日本にベニバナイチヤクソウ、コイチヤクソウなど7種が分布する。

[高橋秀男 2021年4月16日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イチヤクソウ」の意味・わかりやすい解説

イチヤクソウ(一薬草)
イチヤクソウ
Pyrola japonica

ツツジ科の常緑多年草。日本各地の山地木陰に生え,細長い地下茎がある。葉は数枚根生し,質が厚く,円形でつやがあり,上面は濃い緑色であるが,下面は柄とともに紅紫色を帯びることがある。初夏,高さ 15~30cmの花茎を出し,その上部に数個の白色の花を下向きにつける。萼片,花弁ともに 5枚あり,10本のおしべの花糸は同じ方向に曲がっている。花柱は長く花外に突き出し上方に湾曲する。葉が小型で腎臓形ジンヨウイチヤクソウ,高さ 10cmくらいでやや小さいコイチヤクソウ,また紅色の美しい花をつけるベニバナイチヤクソウなどいずれも本州中部以北の亜高山帯に生える。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android