イテリメン族(読み)イテリメンぞく(英語表記)Itel'meny

改訂新版 世界大百科事典 「イテリメン族」の意味・わかりやすい解説

イテリメン族 (イテリメンぞく)
Itel'meny

ロシア連邦のカムチャツカ半島の先住民。17世紀末に半島がロシア領に併合され,早くからロシア化が進んだ。そのため,言語は旧シベリア諸語の一つであるイテリメン語カムチャダール語)とロシア語であるが,前者を話す人口は約2400人余(1989)である。イテリメンは自称で,19~20世紀には〈カムチャダールKamchadaly〉という名称が先住民,または先住民とロシア人の混血に対して用いられた。かつては川の流域竪穴住居と小舎を設けて冬と夏で住居を変え,漁労を主に狩猟・採集生活を営んだ。移動運搬手段として犬橇かんじきやスキー,川では丸木舟が用いられた。シャマニズムワタリガラスの神話などは旧シベリア諸語系のチュクチ族コリヤーク族に共通していた。今日ではコルホーズに属し,漁業,狩猟のほか園芸等に従事している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イテリメン族」の意味・わかりやすい解説

イテリメン族
イテリメンぞく
Itel'men

ロシア東部,カムチャツカ半島の先住民。人口約 2500。イテリメン語はコリャーク語チュクチ語と親縁関係にあり,両者とともにいわゆる古シベリア諸語に含まれる。古くは石器や骨器を主とする道具を用いて漁労,狩猟を生業としていたが,18世紀にロシア人がカムチャツカ半島に進出するに及び,次第にその影響を受けるようになった。特に,ロシア人と混血したイテリメン族はロシア語を母語とするようになり,イテリメン語を母語とする本来のイテリメン族と区別され,カムチャダール族と称されるようになった。ソ連時代にはイテリメン族の大部分はコルホーズを構成した。

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世界大百科事典(旧版)内のイテリメン族の言及

【ソビエト連邦】より

…上記のハンティ,マンシ,ネネツもその一部であるが,大部分はツングース語系諸族と旧シベリア諸族(パレオアジアート,古アジア諸族とも呼ばれる)である。前者には西シベリアからオホーツク海沿岸に分布するエベンキ族,アムール川下流,サハリン,沿海州に分布するエベン族,ナナイ族,ウリチ族,ウイルタ族(旧称オロッコ族),オロチ族などの民族が属し,後者にはコリヤーク族,チュクチ族,イテリメン族(旧称カムチャダール族),ニブヒ族(旧称ギリヤーク族),ユカギール族,ケート族などの民族が属する。 インド・ヨーロッパ語族に属する言語をもつ民族には,前記のロシア人,ウクライナ人,白ロシア人(ベラルーシ人)のほかに,バルト海沿岸にリトアニア人とラトビア人,ウクライナの南に,ルーマニア人と言語・文化の面で近いモルダビア(モルドバ)人がいる。…

※「イテリメン族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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