日本大百科全書(ニッポニカ) 「イトマンオオキンギョ」の意味・わかりやすい解説
イトマンオオキンギョ
いとまんおおきんぎょ / 糸満大金魚
[学] Meganthias kingyo
硬骨魚綱スズキ目ハタ科ハナダイ亜科に属する海水魚。宮古(みやこ)列島、八重山(やえやま)諸島に分布する。体は卵形で、体高が高くて強く側扁(そくへん)する。口は大きく、体長の約18%。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)の後端は幅が広くなり、瞳孔(どうこう)の後縁下に達する。両眼間隔域は凸状で、幅が広い。上顎に絨毛(じゅうもう)状歯帯があり、最外側歯は最大で、犬歯状。下顎歯は絨毛状で、最外側歯はもっとも大きい。口蓋骨と舌上にも絨毛状歯がある。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)にはダイヤモンド形の歯帯がある。主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)に3本の扁平(へんぺい)な棘(きょく)があり、中央のものは最長で、下の棘にやや近い。前鰓蓋棘の後縁は鋸歯(きょし)状で、隅角(ぐうかく)部に棘がない。間鰓蓋骨と下鰓蓋骨は弱い鋸歯状または円滑。体は櫛鱗(しつりん)で覆われ、両唇、喉部(こうぶ)および前頭部は無鱗。背びれと臀(しり)びれの軟条部および胸びれと尾びれには鱗(うろこ)がある。背びれは10棘16~17軟条。背びれ棘は強く、第3棘~第10棘はほとんど同長。背びれ軟条は雄では伸長する。臀びれは3棘9軟条。臀びれ軟条部の外縁は垂直。胸びれの後端は臀びれの起部に達する。腹びれ起部は胸びれの基底下のわずかに前にある。尾びれは深くU字形に湾入し、両葉は櫂(かい)状である。
体色は雌雄で異なる。雄では頭と体の背部は淡赤色で、腹側に向かって淡桃色になる。背びれ棘部と軟条部の先端の半分は黄色で、ほかは桃色。臀びれは淡赤色で、先端部に黄色帯がある。尾びれは淡赤色で、縁辺部は赤紫色。胸びれは黄色で、縁辺では桃色、上縁では白色。腹びれは黄色。雌では頭と体は桃色で、腹側に向かって白くなり、背側面に多数の暗褐色の斑点(はんてん)が散在する。背びれは白桃色で、暗褐色点が散らばる。背びれの前中央部には黄色帯があり、棘部の後ろで上方へ向かって曲がり、ひれのもっとも高いところの縁に沿って走る。臀びれは桃色で、縁近くに黄色帯がある。尾びれは桃色。胸びれは桃色で、上下縁は白く、基部に暗褐色斑がある。腹びれは前部では黄色で、後方に向かってだんだんと桃白色になる。
水深100~300メートルの岩礁域にすむ。最大体長は28センチメートルほどになる。
本種はイトマンオオキンギョ属に属する。同属は体高の高いことでイッテンサクラダイ属に似るが、臀びれが9軟条(後者では7~8軟条)で、前鰓蓋骨の隅角部に棘がないこと(後者では棘や大きな鋸歯がある)で区別できる。なお、本種の学名のM. kingyoは体形と色彩が金魚に似ていることから命名された。
[尼岡邦夫 2021年8月20日]