イドリーシー(読み)いどりーしー(英語表記)al-Idrīsī, Abū ‘Abd Allāh Muammad

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イドリーシー」の意味・わかりやすい解説

イドリーシー
いどりーしー
al-Idrīsī, Abū ‘Abd Allāh Muammad
(1100―1166)

イスラム地理学者モロッコセウタに生まれる。スペインコルドバで学び、小アジア、アフリカ、スペイン、フランスを旅行した。シチリア島のノルマン王ルッジェーロ(ロジェール)2世に招かれ、首都パレルモで平面天体図、世界地図をつくり、その解説書『世界踏破の愉悦』を著した。のちさらに大部な地理書『有衆の庭』を著し、グリエルモ1世Guglielmo Ⅰ(1120―1166)に献じたが、散逸して現存しない。国際的な学術都市パレルモにおいて西欧キリスト教国に関する豊富な知識を入手し、遠くスカンジナビア、大西洋島嶼(とうしょ)に至るまでの正確な知識を加筆している。その世界地図は完備をもって知られる。

[佐藤圭四郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イドリーシー」の意味・わかりやすい解説

イドリーシー
Idrīsī

[生]1100. セウタ
[没]1165
イスラム世界が生んだ最もすぐれた地理学者の一人。北アフリカのセウタに生れ,スペインのコルドバで勉学し,以後地中海諸国を歴訪した。シチリアのノルマン王,ロジェール2世に招かれ,王のために『諸国踏破を切望するものの慰め』『道里記』などを著わした。特に前者は『ロジェールの書』とも呼ばれ,数種の写本が今日伝わっており,それに付された世界地図は,イスラム地理学の典型的地図として有名である。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

放射冷却

地表面や大気層が熱を放射して冷却する現象。赤外放射による冷却。大気や地球の絶対温度は約 200~300Kの範囲内にあり,波長 3~100μm,最大強度の波長 10μmの放射線を出して冷却する。赤外放射...

放射冷却の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android