改訂新版 世界大百科事典 「イフラント」の意味・わかりやすい解説
イフラント
August Wilhelm Iffland
生没年:1759-1814
ドイツの俳優,座主,劇作家。マンハイムの宮廷劇場で指導的な役を演じる俳優として,シラーの処女作《群盗》のフランツ・モール役を演じた(1781)。1784年から劇作を開始。96年ベルリン国立劇場支配人,1811年には総支配人となり,巡回劇団を組織してドイツ全土で喝采を博した。みずから稽古を指導,舞台装置制作を監視するなどしてベルリン劇場をドイツ劇界の先導者とすることに貢献した。生涯に60編以上の作品を書き,当時コツェブーとならんでもっとも上演回数の多い劇作家であった。たくみに構成された勧善懲悪の市民劇を得意とした。彼の人物描写の正確さをゲーテが賞賛した。一方,ティークは彼の才能をみとめながらも,深味に欠けるといって批判した。俳優としてのイフラントはリアルな細部描写に重きをおく人であったと伝えられている。
執筆者:宮下 啓三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報