改訂新版 世界大百科事典 「インディアス枢機会議」の意味・わかりやすい解説
インディアス枢機会議 (インディアスすうきかいぎ)
Consejo Real y Supremo de las Indias
インディアス(新大陸の植民地およびフィリピン)に関係するあらゆる事柄について国王を補佐するスペインの官僚組織。もともとフェルナンド2世の時代,1511年にカスティリャ枢機会議内にインディアス会議が設けられており,この会議が24年8月,カルロス1世の勅令によって国王直属の独立した枢機会議に格上げされた。会議の議長および議員の任免は王室によって行われ,その構成員と定員は時代によりかなり変化がみられる。下級官吏として,弁護士,財務官,世界誌学者,数学者,史官などがいる。枢機会議の機能については,42年の〈インディアス新法〉(インディアス法)によって一応規定されたが,最終的には71年9月24日付フェリペ2世の勅令で定められた。立法・行政・司法の三権に相当する権力を行使し,植民地関係の業務で国王権力を代行した。したがって植民地当局はそれぞれの職務に関して常に枢機会議へ報告を行う義務を負った。枢機会議は植民地関係の法律を起草,発布したり,植民地で発生した民事訴訟の上級裁判所の役目を負い,アウディエンシアと通商院の間でおきた諸問題,あるいはアウディエンシア同士の係争の最終審をも管轄した。また,植民地の官吏や高位聖職者(大司教,司教など)の任命に際し,国王の有する指名権も行使した。枢機会議は被任命者を監視する役目を負い,副王(副王制)に対するレシデンシア(執務査察制度)の報告を検討したり,植民地の実情を調査するためビシタドール(巡察吏)を派遣したりした。枢機会議は16~17世紀を通じてインディアス関係の専門家が属する国王の諮問機関として最も重要なものであったが,18世紀初頭,フェリペ5世が海軍・インディアス省を設置し,枢機会議の活動を司法関係に限定した。その後,枢機会議は1812年のカディス会議によって廃止が決定されたが,フェルナンド7世の復位後,再建され,34年まで存続した。
執筆者:染田 秀藤
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報