インペラトル(読み)いんぺらとる(英語表記)imperator ラテン語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インペラトル」の意味・わかりやすい解説

インペラトル
いんぺらとる
imperator ラテン語

古代ローマにおいて用いられた称号。ローマでは、司令官が、戦勝のあと、兵士によって「インペラトル」と呼びかけられると、その司令官は任期中あるいは凱旋(がいせん)式挙行までの期間、この称号を帯びた。語義は「インペリウム」保持者。最初の確実な例は、紀元前189年にみいだされる。共和政末期には軍事的権威を意味する称号となり、カエサルはこれを永続的に用いた。初代皇帝アウグストゥスは、皇帝としての正式名“Imperator Caesar divi filius Augustus”の冒頭にこれをつけ、以後、最高権力を表す称号として用いられるようになった。しかし、戦勝将軍の称号としての用法も存続し、皇帝は部下の将軍の戦勝の栄誉を自己のものとして数え、正式称号の末尾に「インペラトル何回」というふうにつけた。英語のemperorの語源である。

[弓削 達]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「インペラトル」の意味・わかりやすい解説

インペラトル
imperator

古代ローマで,インペリウム (命令権) をもつ将軍が外敵に対する相当規模の戦争に勝利を収めたとき,部下の兵士から与えられた称号。任期中,または凱旋まで,この称号を保持できた。ときとして元老院がこの称号を与え,または確認することもあり,共和政末期,軍隊の政治的役割の増大とともにインペラトルは軍事的権威の象徴となった。オクタウィアヌス (皇帝アウグスツス ) は,前 27年元老院からアウグスツスの称号を与えられ,みずからを Imperator Caesar Divi Filius Augustusと称したが,この Imperator Caesar Augustusは,のちに長く皇帝称号の中核をなすようになり,ここから emperorのように「皇帝」を意味する近代語が生れた。

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