日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウィックスティード」の意味・わかりやすい解説
ウィックスティード
うぃっくすてぃーど
Philip Henry Wicksteed
(1844―1927)
イギリスの経済学者。リーズに生まれる。ロンドンのユニバーシティ・カレッジ卒業後、父の聖職を継ぎ、のちにユニテリアン派の指導者となったが、1897年以後著述に専念した。経済学への関心はヘンリー・ジョージの『進歩と貧困』Progress and Poverty(1879)によって誘発され、彼の最初の経済学の著書『経済学入門』The Alphabet of Economic Science(1888)では、彼がジェボンズの追随者といわれたように、限界効用(彼がイギリスでこのことばを最初に使った。ジェボンズは最終効用とよんでいた)学説の解説を試みた。彼の第一級の経済学者としての業績は『分配の諸法則の統合』An Essay on the Co-ordination of the Laws of Distribution(1894)であり、これがのちにウィクセルによって完成された限界生産力説による生産・分配両理論の統合の端緒となる。また、彼の大著『経済学の常識』The Common Sense of Political Economy(1910)は「経済学の共通認識」とも訳すべき難解の書であるが、近代経済学派の最高の経済哲学書であろう。
[島津亮二]