改訂新版 世界大百科事典 「ウィックスティード」の意味・わかりやすい解説
ウィックスティード
Philip Henry Wicksteed
生没年:1844-1927
イギリスの経済学者。ヨークシャーのリーズに生まれ,ロンドンのユニバーシティ・カレッジを卒業後,1874-98年,ロンドンでユニテリアン派の有力牧師として活躍した。倫理学,社会学から経済学に関心をもつようになったが,W.S.ジェボンズの最終効用理論から出発して,それを〈限界効用marginal utility〉と呼びかえ,限界主義理論を展開したのが《経済学のアルファベット》(1888)である。のち《分配法則の統合に関する一試論》(1894)において,限界原理を生産要因の価格決定に応用し限界生産力理論(限界生産力説)を構成した。そしてこの理論が成立するための前提条件として,生産関数の一次同次性と完全競争とを指摘し,いわゆる完全分配問題の解決に貢献した。主著《経済学の常識》(1910)は,限界主義理論の体系的説明であり,そこには機会費用論や供給曲線の転換可能性に関する貢献もみられるが,大きな特徴は,限界原理による極大化原理を経済行動だけでなく,人間のすべての行動にまで拡大し,一般的な選択理論を主張したところにある。
執筆者:田中 敏弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報