ウバメガシ(読み)うばめがし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウバメガシ」の意味・わかりやすい解説

ウバメガシ
うばめがし / 姥目樫
[学] Quercus phillyreoides A.Gray

ブナ科(APG分類:ブナ科)コナラ属の常緑低木ないし小高木。海岸の風衝地に群生し、幹は曲がり、普通は大木とはならないが、瀬戸内沿岸には大木が多い。葉は枝先に輪状に集まってつき、質は厚く、上半部に鋸歯(きょし)があり、長さ3~5センチメートルで日本産のブナ科植物ではもっとも小さい。4月下旬、当年枝のもとに雄花序と雌花序をつける。果実は翌年の秋に熟し、広楕円(こうだえん)形で長さ2センチメートルとなり、食用になる。名は若葉や新枝に褐毛を密生することによる。千葉県以西の本州から沖縄までの海岸に生育し、中国、台湾にも分布する。乾燥、刈り込みに強く、公園樹や垣根に使う。材は日本の樹木中もっとも重く、比重1.0前後。炭としては最上備長炭(びんちょうたん)がとれる。

[萩原信介 2020年1月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウバメガシ」の意味・わかりやすい解説

ウバメガシ(姥芽樫)
ウバメガシ
Quercus phillyraeoides

ブナ科の小型常緑のカシの1種。西日本の暖地や海岸付近に生じる。特に瀬戸内海の小島や九州の海岸の崖などによくみられる。主幹が直立せず,よく枝分れして,全体にこんもりした樹形をつくる。このため庭木や公園の植込み,街路樹などによく植えられ,最近は高速道路のグリーンベルトに好んで植えられている。葉は長さ4~6cmの楕円形ないし小判形で質は厚く,硬い。若葉は黄褐色の毛でおおわれるが,成葉は無毛で濃緑,光沢がある。鋸歯は上半部の葉縁にだけある。初夏に,葉腋から長さ5~6cmの紐のような花穂 (尾状花序) を垂らして雄花をつける。雌花は葉のつけ根につき,秋に紡錘状のどんぐりとなる。この堅果にはほとんど渋みがなく食用になる。なお,この木の若葉はタンニンを含み,昔,婦人の「お歯黒染め」に媒染剤として用いられたという。

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