団栗(読み)ドングリ(英語表記)acorn

翻訳|acorn

デジタル大辞泉 「団栗」の意味・読み・例文・類語

どん‐ぐり【×栗/×橡】

クヌギカシワコナラカシなどのブナ科植物の実。球形卵形で堅く、下方殻斗かくとが包む。 秋》「―の寝ん寝んころりころりかな/一茶

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精選版 日本国語大辞典 「団栗」の意味・読み・例文・類語

どん‐ぐり【団栗・橡】

  1. 〘 名詞 〙 ブナ科のカシ、クヌギ、ナラ、カシワなど、ナラ属の果実の総称。狭義にはクヌギの果実をさす。褐色の堅い果皮をもつ堅果で、下半部は椀状の殻斗(かくと)に包まれている。澱粉質に富むが一般には渋味が強くそのままでは食べられない。採取や保存の容易さなどで古代は重要な食料であった。《 季語・秋 》
    1. [初出の実例]「橡実 味苦微温无毒〈略〉又和止ン久利」(出典:康頼本草(1379‐91頃)本草木部下品之集)

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改訂新版 世界大百科事典 「団栗」の意味・わかりやすい解説

団栗 (どんぐり)
acorn

ブナ科,とくにコナラ属(クヌギカシ類など)植物の果実の総称で,樹上にあるときは基部は殻斗に包まれている。果皮は堅く,つやがあるか,毛におおわれる。断面は丸く,先端部には花のときの構造,すなわち3本の花柱と6枚の花被が硬化して残存している。底部には,丸い大きな付着点がある。殻斗は果実の基部の1/3~1/2を包んでいて,完熟した果実は落下時または後に殻斗と離れる。殻斗の表面の模様は種類の特徴をよくあらわしていて,大きく分けると鱗片が配列するもの(コナラ属コナラ亜属やマテバシイ)と,同心円状の輪があるもの(コナラ属アカガシ亜属)とがある。果実の内部には1室があり,普通,1個の種子で満たされる。種子には胚乳がなく,養分をためた半球状の大きな2枚の子葉が合わさって入っている。この子葉は発芽時にも地下にとどまるのが普通である。

 果実はタンニンを含み,渋いが食用となる。縄文時代などの遺跡から,食用として貯蔵されたどんぐりがしばしば発掘される。また,ごく最近まで農山村では非常食用としてどんぐりを貯蔵する風習が残っていた。暖温帯の常緑のカシ類は天日で乾燥した後,砕いて流水によくさらして,渋抜きをし,熱を通して食用とされる。冷温帯の落葉樹であるナラ類やクヌギなどを食用とするには,さらに木灰や熱湯を利用した複雑な工程の渋抜きが行われていた。しかしこの地域ではトチの実(トチノキ)の利用が主となり,どんぐり利用の習慣はあまり残っていない。どんぐりの渋さの程度は種により異なり,それに応じて食用とされる頻度も異なる。遺跡に貯蔵されているどんぐりで最も多いのは,それほど渋くないイチイガシである。このほか,中国ではクヌギの殻斗を染料としたし,果皮が堅くて乾いても変形しないどんぐりは,玩具や装飾品に使われ,こま,弥次郎兵衛,笛,人形などをつくる。また,殻の厚いマテバシイ属のどんぐりは数珠の玉にも使われる。
執筆者:

どんぐりは古くから食用に供されていた。ことに中部山岳地帯の縄文中期の遺跡からは,多くの堅果類やそのデンプンを用いたと思われるパン状の食品が出土している。山村では長く飢饉の際の食糧不足を補うものとされ,どんぐり粉で餅を作ったり,裸麦を混ぜてどんぐり団子にしたり,こんにゃく状の食品にして食べた。ナラの実はシダミと呼ばれ,火棚の上に保存して凶荒に備えたり,北飛驒や北上山地の山村では,これを粉にして常食にしていたという。どんぐりはあく抜きを必要とするため,〈どんぐりを食べると,どもりになる〉ということわざもある。九州山地の村では,〈イッチ,カッチ,カーダキの実,食われんものはどんぐりの実〉と歌われ,前の三つは照葉樹のどんぐりで食用にできるが,最後のどんぐりはクヌギの実のことで,ここでは食用の対象にされていなかった。韓国にはムックとよぶどんぐり粉で作ったこんにゃく状の食品があり,また北アメリカ・インディアンの中には,サケ・マス漁とどんぐりなどの木の実採集の組合せを基盤とする文化がみられた。
執筆者: フランスに〈パンがあるときに無理にどんぐりを食べるには及ばない〉ということわざがある。ヨーロッパでは古代ギリシア・ローマ時代から,パンとの対比において,どんぐりは未開時代の食物と考えられてきた。穀物が知られるようになっても,飢饉のときには食べたという伝承や記録はヨーロッパには数多くあり,その料理法も書かれている。ヨーロッパでもう一つ注目すべきことは,人間がどんぐりを食べなくなった後にも,ブタにはどんぐりを食わせていたことであり,どんぐりが実る秋になると,中世ヨーロッパの人々は多くのブタを森の中に連れていき,どんぐりをたたき落としてブタに食わせた。そしてこうした行為は,ブタの森林放牧入会権として法制化された。
執筆者:

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動植物名よみかた辞典 普及版 「団栗」の解説

団栗 (ドングリ)

植物。ブナ科の落葉高木,園芸植物,薬用植物。クヌギの別称

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世界大百科事典(旧版)内の団栗の言及

【アベマキ】より

…雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)に1~2個つく。果実はどんぐりで,開花翌年の秋に成熟し,長く反り返った鱗片を持つ殻斗に下部が包まれる。クヌギに比べ,どんぐりは縦長で,殻斗の鱗片がよく発達している。…

【ウバメガシ】より

…雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)から出た短い枝上に1~2個つく。雌花は小さいまま冬を越し,翌年の秋に成熟してどんぐりとなる。殻斗には鱗片がある。…

【オーク】より

…ふつうはコナラ亜属Subgen.Quercusとアカガシ亜属Subgen.Cyclobalanopsisに二大別されるが,それぞれが独立の属と考えられる場合もある。両者のおもな違いを述べると,コナラ亜属の樹種は北半球の温帯を中心に分布し,多くは落葉樹で,果実の殻斗(種子,いわゆるどんぐりの基部を包んでいる椀状の総苞)の表面がうろこ状であるのに対し,アカガシ亜属の樹種はおもにアジアの熱帯から暖温帯に分布し,すべて常緑で,殻斗の表面は輪層状をなしている。これは前者に属する日本のナラ類(ミズナラ,コナラカシワなど)と後者のカシ類(アカガシ,シラカシ,アラカシなど)を比較すると容易に理解できる。…

【カシ(樫)】より

…雌花は新枝の上部の葉腋(ようえき)につき,3本のめしべをもつ。果実はどんぐりで,基部は輪層紋をもつ殻斗に包まれる。 シラカシQ.myrsinaefolia Bl.(イラスト)は枝が細く,緑褐色でつやがある。…

【カシワ(柏)】より

…雄花は6~8本のおしべを花被が包んでおり,雌花は3本のめしべを鱗片状の花被が包む。果実はどんぐりで,長くて反り返った鱗片が密生する殻斗に包まれる。北海道,本州,四国,九州,南千島,沿海州,中国,朝鮮,台湾に分布する。…

【コナラ】より

…毛の生えた鱗片状の苞や花被の間から3本の花柱が見える。どんぐりは細長く,その年の秋に熟す。殻斗(かくと)は細かい鱗片におおわれる。…

【植物】より

…そして第3は農業生産に余裕ができ,それゆえ,有用植物以外の植物つまり観賞用の植物の開発が行われるようになった段階である。 J.J.ルソーは《人間不平等起源論》で〈人間はオークの下でどんぐりを腹いっぱい食べ,食物を提供してくれたその同じ木の下を自分のねぐらとしていた。しかし小麦の出現とともに人類は堕落した〉と述べて原始生活を賛美したが,逆にボルテールは〈小麦を知ってしまっているわれわれを,再びどんぐりの時代へと連れもどすな〉ということわざを使って,時代に逆行する試みをいましめた(《哲学辞典》〈小麦〉の項)。…

【農事暦】より

…農民の採草畑は少なく,家畜の冬季飼料用の干し草を十分に準備することができなかったため,必要最小限の家畜を残して屠殺した。この月,農民は豚をオークの森に追い込み,そのどんぐりで肥育した。穀物の生産性がきわめて低い北ヨーロッパでは,どんぐりで肥育できる豚は貴重な食料で,塩漬にして冬の食料として貯蔵した。…

※「団栗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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