日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウミエラ」の意味・わかりやすい解説
ウミエラ
うみえら / 海鰓
sea pen
腔腸(こうちょう)動物門花虫綱八放サンゴ亜綱ウミエラ目Pennatulaceaの海産動物の総称、またはそのなかの代表種。ウミエラ類は八放サンゴ類で唯一の非固着性のグループで、深海より浅海の砂地に柄部を突き刺して生活しているが、一般にやや深い所に多い。すべて群体性であるが、群体は分枝することはなく、ポリプを分布させる茎部と、砂中に体を保持するための柄部の二つの部分に分けることができる。ほとんどの種は体に骨軸をもっている。骨軸は非常に発達が悪く、わずか数ミリメートルのものから群体の全長にわたるものまであり、また角質で柔軟なものから石灰化して硬いものまである。また、骨軸の断面は円形のものと四角形のものとがある。茎部は、茎上に直接ポリプを散在させるものと、茎上に葉状突起をもち、その上縁にポリプが並ぶものとがある。ポリプは二型現象を示し、通常、個虫はほかの八放サンゴ類と同様に8本の羽状触手と8枚の完全隔膜をもち、ポリプ背側以外の6枚の隔膜に生殖腺(せん)が発達する。一方、管状個虫は触手や隔膜を欠く。すべて海産であるが、汽水域にも特有種が生息する。一般にインド洋から西太平洋の暖海に多いが、寒帯にのみ生息する種もある。つねに雌雄同体で、卵は受精から発生後、プラヌラplanula幼生で着底し、1個のポリプとなる。それが無性生殖を繰り返して群体となるが、最初の個虫はつねに群体の頂部に位置する。かつて、この類は葉状体を打ち振って海中を泳ぐものと信じられていたが、そのようなことはない。
ウミエラ類には発光するものが多く、とくにヒカリウミエラPennatula phosphoreaの群生する所では、その燐光(りんこう)の点滅する明るさで付近を遊泳する魚を容易に数えることができるほどといわれる。浅海性のウミエラ類は、夜行性で昼間は体を縮めて砂中になかば埋もれているが、夜になると大きく伸長し、ポリプをいっぱいに開く。トゲウミエラやウミエラの葉状体の間にはしばしばウミエラカニダマシが共生する。ウミエラ類は、各ポリプが直接茎部から出る定坐亜目(ていざあもく)と、ポリプが葉状体上に基部を連ねて生ずる半坐目とに分かれる。前者にはウミサボテン、ウミシイタケ、フサウミエラなどがあり、後者にはヤナギウミエラ、ヒカリウミエラ、ウミエラ、トゲウミエラなどがある。オオヤナギウミエラBalticina fimmarchicaは、ウミエラ類中の最大種で、全長2メートルになり、その骨軸は白くて硬いため俗に白珊瑚(しろさんご)といわれ、箸(はし)やステッキなどの材料にされる。
ウミエラLeiopterus fimbriatusは、本州沿岸の60~700メートルの砂泥底にすみ、体長10~20センチメートル。骨軸の断面は四角、葉状体は20~40対で、各葉状体外縁に50~100個のポリプを列生させる。
[内田紘臣]