ウルス(その他表記)ulus

改訂新版 世界大百科事典 「ウルス」の意味・わかりやすい解説

ウルス
ulus

トルコ語モンゴル語で,もともとは人間集団意味した。転じて多様な意味を持つようになり,部,部族住民,あるいは国,国家王朝などをウルスと呼ぶようになった。基本的には,その集団の大小に関係なく,一つの政治的集団はウルスと呼ばれたが,さらに小さなウルスを結集したより大きな政治集団,例えばハーン国なども単にウルスと呼ばれた。現代モンゴル語では,国,国家の意味に用いられることが多い。
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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ウルス」の解説

ウルス
ulus

モンゴル語で「国家」「政治集団」「人々」を意味する語。トルコ語で「地域」「都市」を意味する地理的概念ウルシュがモンゴル語に入り,政治的概念ウルスとなった。トルコ語で「国家」「政治集団」「人々」はイル(il)という。チンギス・カンの即位後に,彼の諸子,諸弟への分封が行われ,モンゴル高原中央にチンギス・カンのウルス,西部に諸子(ジョチオゴデイチャガタイ)の3ウルス,東部に諸弟の3ウルスが形成され,モンゴル帝国原型となった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウルス」の意味・わかりやすい解説

ウルス
うるす
ulus

トルコ語、モンゴル語で、もとは人の集まり、集落を意味した。のちに、より大きな人間の集団をさすようになり、部族、地方、住民、あるいは国を意味した。文献的には、732年に建てられた突厥(とっけつ)碑文にも「国」の意味でウルスの用語がみられる。また文語モンゴル語文献としてはもっとも古い「チンギス・ハン碑文」(1225)にも「普(あまね)きモンゴル・ウルス」ということばがみられる。

森川哲雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルス」の意味・わかりやすい解説

ウルス
ulus

モンゴル語で「国」または「国民」,独立の統治者のもとに結集した人の集団をいう。モンゴル帝国という場合の「帝国」も,チャガタイ・ハン国などと称する際の「ハン国」も,ともにモンゴル語ではウルスと呼ばれた。

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世界大百科事典(旧版)内のウルスの言及

【墓】より

…聖者の近くに埋葬されることで,死後,聖者の仲介が求められるからである。有名な聖廟には,遠隔地から参詣(ジヤーラjiyāra)が行われ,とくに年1度の聖廟の例祭(マウリド,インドではウルス)が催され,この期間に市が立ちにぎわう。下エジプトではタンターの聖者アフマド・アルバダウィーの聖廟が,インドではアジュメールの聖廟が有名である。…

【元】より

… すなわち第2代オゴタイ・ハーン(太宗)の治世にはロシア諸侯国が服属し金王朝および蒲鮮万奴(在位1215‐33)の大真国が併合され,続く第4代モンケ・ハーン(憲宗)の治世にはアッバース朝の討滅と高麗,西蔵,安南の内属が決定し,ついに西は地中海から東は日本海にわたる帝国最大の版図が実現されることになる。この間,太祖は広大な領地を割いてアルタイ山以西の草原に諸子(長男ジュチの嫡子バトゥ,次男チャガタイ,三男オゴタイ)を,興安嶺左右の地には諸弟(次弟カッサールの諸子,三弟カチウンの諸子,四弟オッチギン)を分封し,ここにハーンを頂点とするモンゴル朝廷は一族諸王を頂く遊牧封建諸侯国(ウルス)を左右に率いて南方に征服した定住文化地域(中国,ウイグリア,ソグディアナ)を直轄領とする大モンゴル帝国の支配体制を整えたわけである。この南方定住文化地域は物的・人的資源において北方草原遊牧地域を圧倒する実質を有しており,その確保こそはハーンの権威ひいては帝国の統一にも関わる要件だっただけに,新設の諸ウルスにとってもやがてはそれが食指を動かす対象とならずにはおかないであろう。…

【モンゴル帝国】より


[国家体制]
 建国前強力であったキヤトとタイチウトの両オボクの系統は,人畜の戦利品や略奪物が多かったらしく,両系統の男子の多くは,それらを財産として分与され,従来のオボクとは異質の組織体を形成するようになっていたようである。それらは依然オボクを称することもあったが,国家の意味ももつウルスulusと称されることがあった。カブルの子孫であるテムジンは,このようなウルスに囲まれて育つ一方,同族の近縁者のあてにならないことを体験したため,オボクや近縁者にあまり頼ることなく,友情や忠誠心から彼に仕え,ノクルnökürとよばれた人々を最も信頼し,その量と質の充実に努めた。…

※「ウルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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