エイランタイ(英語表記)Cetraria islandica(L.)Ach.

改訂新版 世界大百科事典 「エイランタイ」の意味・わかりやすい解説

エイランタイ (依蘭苔)
Cetraria islandica(L.)Ach.

北半球寒帯高山地上に生え,北欧ではトナカイの餌になるウメノキゴケ科の樹枝状地衣。革質で褐色または緑褐色。地衣体は多数集まって生じ樹枝状に分枝して立ち上がり,高さ3~6cm,幅2~5mm,縁にそって黒色の短い突起を密生する。仮根はない。表面平滑で全体に微小な白点(偽盃点)がある。子器は地衣体頂端につき,腎臓形で褐色。髄層白色近縁マキバエイランタイC.ericetorum Opiz.は地衣体が著しく管状となり,偽盃点が地衣体の葉縁にそってできる。エイランタイの仲間には苦みのあるフマールプロトセトラール酸という地衣成分を含むものが多く,ヨーロッパでは昔,健胃剤として利用した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エイランタイ」の意味・わかりやすい解説

エイランタイ
えいらんたい
[学] Cetraria islandica (L.) Ach. var. orientalis Asah.

地衣類ウメノキゴケ科の1種。地衣体は直立または斜めに立ち上がる樹状地衣。高さ5~10センチメートル、幅5~10ミリメートルの平らな地衣体であるが、多少管状に縁が巻き込んで、いくつかの枝を出す。日当りのよい所のものは褐色か黒褐色でややつやがあるが、日陰の湿った所に生えるものでは緑色になることが多い。地衣体の縁には、ごく細い刺(とげ)状の突起を出し、表面には白色の小さな点が散生する。子器は円盤状で、分枝した地衣体の先のほうにつく。北半球の寒帯に広く分布していて、古くから北ヨーロッパなどでは食料にしたり、民間薬として利用していた。エイランタイによく似ていて日本の高山に普通にみられるマキバエイランタイC. ericetorumは、地衣体の縁が強く内側に巻き込んで、表面が濃褐色になる。

[佐藤正己]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エイランタイ」の意味・わかりやすい解説

エイランタイ
Cetraria islandica

アイスランドゴケ Iceland mossともいう。北半球の高山地帯,アイスランドなどの溶岩上に分布する樹状地衣。体は灰白色ないし濃褐色,直立,不規則に分岐し,下端は仮根となって岩上に付着する。高さ 7cmに及ぶ。各分岐片の縁には著しい剛毛があり,しばしばその先端に盤子器をつける。この地衣の藻類は,単細胞の緑藻類である。この地衣体は約 70%のリケニン (地衣デンプン) を含み,トナカイ,カリブー,オオシカなどの食用となる。またヒツジ,ウシなどの飼料にあてることもできる。なお,この地衣にはやや苦みがあるが,水に浸し,乾かし,粉にしてから人の食料とすることができる。工業的にはグリセリンの原料となり,石鹸やコールドクリームの製造に用いられる。

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百科事典マイペディア 「エイランタイ」の意味・わかりやすい解説

エイランタイ(依蘭苔)【エイランタイ】

北海道〜四国の高山の地上に生ずる地衣類で,北半球に広く分布。全体が濃いくり色で,地上に直立し高さ3〜6cm,枝分れして樹状を呈する。ふつう多数群生し,基部が次第に腐朽して赤褐色に変色し,全体が基物から遊離する。白い点状の擬盃点(表層の一部が欠落して白い髄が露出したもの)を表面に散生する。デンプン質を多量に含み食用となる。北欧では製粉して商品とされる。近縁のマキバエイランタイは外形が本種とよく似るが,擬盃点は側面にだけ生ずる。

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