アナフィラキシーの進行を一時的に緩和し、ショック症状への進展を防ぐため、医師による治療を受けるまでの間に用いる補助治療薬。
「エピペン」は製薬会社ファイザーが製造販売する製品名で、一般名はアドレナリン(エピネフリン)である。症状をおこした本人や保護者などが迅速に使えるよう考えられた注射用キットで、薬液と注射針が内蔵されたペン型の注射器のほか、薬品についての添付文書や使用情報、携帯用ケース、練習用トレーナー、医師等の連絡先を記入するシール、薬液の使用期限切れ通知のための登録葉書がセットになっている。
注射液0.3ミリグラム(目安として体重30キログラム以上に処方される)と0.15ミリグラム(目安として体重15キログラム以上30キログラム未満に処方される)の2規格がある。日本では2003年(平成15)に0.3ミリグラムが、2005年に0.15ミリグラムがそれぞれ製造承認され、いずれも2011年9月から保険適用となった。
アナフィラキシーの原因物質(抗原あるいはアレルゲン)には、抗生物質などの医薬品、食物、ハチ毒などがあるが、これらに接触したり体内に摂取したあと、数分~数十分以内に急激にショック症状(血圧低下、呼吸困難、意識障害など)が現れることがあり、救急車の到着を待つ間に症状が重篤化し、ときに生命にかかわる状況となる場合がある。そのため、過去にアナフィラキシーを経験した人や、アナフィラキシーを発現する危険性の高い人は、医師の判断と十分な指導のもとに本剤を携帯し、アナフィラキシーが疑われる症状が現れたら、速やかに自ら大腿(だいたい)の前外側に筋肉注射することで、アナフィラキシーによる重篤な状態を回避する。ただし本剤はあくまで応急処置として補助的に使用されるもので、アナフィラキシーの根本的な治療を目的としてはいないため、使用後は速やかに医療機関で医師の診察を受ける必要がある。
エピペン(アドレナリン)は劇薬であり、交付を受ける際には、必ず医師からインフォームド・コンセントを受け、自らが適切に自己注射できるよう、保存方法や使用方法、使用時に発現する可能性のある副作用(動悸(どうき)や頭痛、過敏症状等)などを理解する必要がある。また、自ら大腿に注射する製剤であることから、実際の場面で迅速に使用できるよう、日ごろから練習用のトレーナーを用いて使用方法に習熟しておくことも必要である。
なお、本人が実施できない場合、保護者またはそれにかわり得る適切な者(教職員、保育士、救急救命士など)が人命救助の観点から本剤を使用することは医師法違反にはならず、その責任を問われることはない。
なお、アナフィラキシーショックによる死者は、とくに医薬品やハチ毒による場合が多く、厚生労働省の人口動態統計(2013年)によれば、全死亡数77人のうち、医薬品が37人、ハチ刺傷が24人、食物が2人となっている。
[編集部 2017年12月12日]
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