リチェットとポーチャーによりアナフィラキシー(anaphylaxis)という概念が提唱されました。「イソギンチャクの触手に含まれる毒素をイヌに注射し、2~3週後に同じ毒素を再び注射すると、動物は嘔吐、出血性下痢などのショック症状を示し、しばしば死亡した」とあります。
このような現象は、免疫とは反対の意味をもつ現象であると考えられ、防護状態(-phylaxis)とは反対(ana-)の状態という意味で、アナフィラキシー(ana-phylaxis)と命名されました。最も重篤な状態がショックであるので、アナフィラキシーとアナフィラキシーショックは同義語のように使われています。
臨床的には、特定の起因物質により引き起こされた全身性のアレルギー反応を指します。主にⅠ型アレルギー反応(IgE抗体を介する)によるものと、IgE抗体を介さず起因物質が直接種々の化学伝達物質を遊離、活性化することにより引き起こされるものとに大別できます。
アナフィラキシーショックは基本的には、血管が拡張し
①初期症状あるいは自覚症状
前駆症状は、口内異常感、口唇のしびれ、のどが詰まった感じ、
②他覚症状
初期の他覚症状としては、くしゃみ、反射性
アナフィラキシーの治療は1分1秒を争うので、薬物の服用後やハチ類の刺傷を受けたあとなどに皮膚症状、鼻咽頭症状があれば、ただちに病院へ受診します。アナフィラキシーの多くは、異種蛋白、薬物などを非経口的(注射)に生体内に取り込んだ時に起こりやすいのですが、原因物質に強く
アナフィラキシー症状の出現時間は、個体の感作状態、原因アレルゲンまたは起因物質の量、投与経路によって異なります。典型的な全身性アナフィラキシーの場合、アレルゲンまたは起因物質の注射後5~10分以内に始まりますが、最も早い場合は30秒以内に始まるので、注意を要します。
原則として症状の発現が早い場合は重篤で、遅いと軽い傾向にありますが、症状が進行性であることもしばしばです。なお、症状の発現まで30分以上かかることはまれです。
アナフィラキシーショックは発症が非常に急激で、かつ気道の閉塞を伴います。それによる死亡は初期の1~2時間に起こり、多くは喉頭のむくみや不整脈による心停止などが原因です。さらに重篤な酸素欠乏症と血圧低下によっても起こります。したがって、治療の目的は呼吸と循環を緊急に改善することです。
まずは気道の確保と酸素吸入が重要で、それから輸液および薬剤を投与するための静脈確保が行われます。
アナフィラキシーは予防が最も大切であり、薬物の投与時には、過去のアレルギー疾患歴や薬物に対する反応性などを十分知っておくことが重要です。アレルギー症状(アナフィラキシー症状)の既往歴があれば、その薬を再使用されないよう自己管理をしっかりすべきです。
相良 博典
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
(石川れい子 ライター/2015年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
即時型(Ⅰ型)アレルギー反応によって生じる全身性アナフィラキシーのうち、激しい全身症状を伴ってショック状態になったもの。
[編集部]
…その後の研究により現在は抗原抗体反応にもとづく生体反応と定義され,抗原投与後,急激に発症するものをさす。全身的に現れる場合をアナフィラキシー・ショック,局所的に現れる場合を局所アナフィラキシーと呼んでいる。しかし,ふつうアナフィラキシーといえばアナフィラキシー・ショックのことをさす場合が多い。…
…50~70%の治療効果がある。しかし注射量を誤ると,ときに症状の悪化を起こしたり,アナフィラキシー・ショックを起こすことがある。最近ではこのような副作用を起こさないで,しかもより有効な治療法の開発を目指して,抗原を変性させたり,重合させたり,また他の物質と結合させたりする方法が動物実験で試みられ,一部はヒトにも応用されている。…
※「アナフィラキシーショック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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