エンディミオン(読み)えんでぃみおん(英語表記)Endymiōn

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エンディミオン」の意味・わかりやすい解説

エンディミオン(キーツの物語詩)
えんでぃみおん
Endymion

イギリス詩人キーツの長編物語詩。4巻4060行からなる。「麗しきものは永遠(とわ)に喜びであることをやめない」という有名な一行で始まる。主人公エンディミオンは、ギリシア神話では永遠の眠りに陥ったままで月の女神から受動的に愛されるだけの美青年であるが、この作品ではひたすら月の女神に恋い焦がれ、そのおもかげを求めて夢ともうつつともつかぬ世界をさまよい、さまざまの異常なできごとに遭遇する。美にあこがれ美を追求するキーツ自身の歓喜苦悩とが色濃くにじみ出た注目すべき作品だが、芸術的完成度は高いとはいいがたい。

[御輿員三]

『大和資雄訳『エンディミオン』(岩波文庫)』


エンディミオン(ギリシア神話)
えんでぃみおん
Endymiōn

ギリシア神話の月の女神セレネに愛された羊飼い。王あるいは猟師だったとする説もある。セレネは絶世の美少年エンディミオンを恋するあまり、不老不死の永遠の眠りを彼に授けた。そのため夜ごとセレネがラトモスの山を訪れ、彼の傍らに横たわって愛撫(あいぶ)を与えても、永遠にまどろむ彼はそれにこたえることもなかった。この2人の間には50人の娘があったとする伝承もあるが、これはオリンピア祭の期間である50か月を伝説化したものである。

[小川正広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エンディミオン」の意味・わかりやすい解説

エンディミオン
Endymion

イギリスの詩人 J.キーツのギリシア神話に取材した物語詩。4巻 4050行から成り,1818年刊。第1巻ではラトモス山麓の牧羊者王国の若い君主エンディミオンが,月の女神シンシアを夢に見て恋し,彼女を求めて旅に出る。2巻,3巻は地下と海底放浪を描き,ビーナスとアドニス,アルペイオスとアレトゥーサ,グラウコスとスキューレの悲話伝説が組込まれる。第4巻ではインドの少女に恋した主人公が,天上と地上の両対象に引裂かれて悩むが,インドの少女は実は月の女神の化身であることがわかり,主人公は女神とともに天上界へ昇っていく。理想美の探求が現実の美の追求によって成就されることを示す寓意物語と解釈される。キーツ自身がこの作品を「成就された仕事というよりは熱病的な試み」と評した序文は有名。なお J.リリーと B.ディズレーリに同名の作品がある。 (→エンデュミオン )  

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