セレネ(読み)せれね(英語表記)Selene

翻訳|Selene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セレネ」の意味・わかりやすい解説

セレネ
せれね
Selene

ギリシア神話の月の女神ティタン族のヒペリオンとテイアの娘で、太陽神ヘリオスと、曙(あけぼの)の女神エオスの姉妹。父はパラスまたはヘリオス、母はエウリファエッサとする説もある。ゼウスと交わって娘パンディアを生み、また美しい羊毛(あるいは一群の白牛または白羊)と引き換えに、牧神パンに身を任せた。さらに美貌(びぼう)の羊飼いエンディミオンに恋し、不老不死のまま永遠に眠り続けたいとの彼の望みを約束どおりかなえてやった。そして、夜になると天から降りて彼に添い寝したという。

 古来、月は動植物の繁殖や魔術と関係があるとされ、ヘレニズム時代には霊魂のすみかとも考えられていた。また、セレネはしばしばアルテミスと同一視され、ローマ神話ではルナがこれにあたる。

[丹下和彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セレネ」の意味・わかりやすい解説

セレネ
Selene

ギリシア神話の月の女神。ティタンのヒュペリオンとテイアの娘で,太陽神ヘリオスや曙女神エオスの姉妹。ゼウスとも交わり,パンディアという娘を産んだ。彼女主人公とする最も有名な話は,美男の羊飼いエンデュミオンとの恋愛譚で,それによると彼女は,永遠に美しい青年の姿で眠り続けることをゼウスに許された恋人のいる岩屋毎夜訪れては,眠っている彼を抱擁し,それによって 50人の娘を産んだという。

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