デジタル大辞泉 「川柳」の意味・読み・例文・類語
かわ‐やなぎ〔かは‐〕【川柳】
2 ヤナギ科の落葉低木または小高木。葉は互生し、細長い楕円形もしくは披針形で裏が白い。雌雄異株。早春、葉より先に黄白色の花が穂状に咲く。日当たりの良い水辺に生える。→蒲柳の質
3 番茶の上質なもの。
4 「
[類語]柳・猫柳・枝垂れ柳・青柳
江戸時代中期に庶民の間で親しまれるようになった文芸。和歌を起源とし、俳諧
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江戸中期に始まる17音の短詩。雑俳(ざっぱい)の一様式である前句付(まえくづけ)から、付句(つけく)の五・七・五だけが独立して詠まれるようになったもの。人の見逃しがちな、人事・世相・歴史などの断面をおもしろく指摘してみせる句風で、俳諧(はいかい)にも詠み残されたような、ごく卑俗な題材まで、諸事百般余すところなく句の対象とするところが特色である。
[岩田秀行]
前句付の点者、柄井川柳(からいせんりゅう)の号にちなむ。古くは、「前句(まえく)」「川柳点(せんりゅうでん)」「川柳句」「川柳」「柳樽(やなぎだる)」「狂句(きょうく)」などとさまざまによばれていたが、明治以降「川柳」に定着する。なお、「川柳」の呼称は、人名の柄井川柳とも紛らわしく、時代による性格の変化を十全に表しえないため、歴史的には、「前句付」、「川柳風狂句」(この時代までは「雑俳」の一様式)、「新川柳」、「現代川柳」と区別するのが適切であろう。
[岩田秀行]
柄井川柳は、1757年(宝暦7)前句付の点者を始める。そして、65年(明和2)に、その前句付入選句のなかから、付句だけでも句意のわかる句を選んだ『柳多留(やなぎだる)』という抜粋付句集が出版され、この前句を省略した付句のみの句集が大好評を博し、やがて川柳評の前句付はしだいに、前句と付句との関連性を希薄にしてゆくようになる。この時期の句は、いわゆる「古川柳(こせんりゅう)」として人口に膾炙(かいしゃ)されている佳句が多いが、その句風は川柳評独自というよりも、これ以前の前句付や同時代の他評前句付、また江戸座(えどざ)の俳諧などと類似の句風である。
はなれこそすれはなれこそすれ
子が出来て川の字なりに寐(ね)る夫婦(『川柳評万句合』宝暦8年)
[岩田秀行]
1777年(安永6)ごろから、川柳評は前句と付句との関連がなくなり、87年(天明7)からは、前句の出題も完全になくなって、付句だけが単独に詠まれる形式となる。この時期以降は滑稽(こっけい)味の強い句が増え、とくに柄井川柳没後は、狂句とよぶにふさわしい句調となる。表現的には、この時期以降、川柳評独特のものが生まれ、前句題のかわりに、「浅黄裏(あさぎうら)(=野暮(やぼ)な田舎(いなか)侍)」「相模下女(さがみげじょ)(=好色野鄙(やひ)な下女)」「居候(いそうろう)」など、俳諧の季題に相当するような滑稽な類型的表現が定着する。
居候ある夜の夢に五はい食ひ(『柳多留』82編)
[岩田秀行]
川柳と俳句は、五・七・五の同形式であるが、俳句は俳諧の発句(ほっく)が独立したものであり、川柳は雑俳の付句が独立したものである。つまり、俳句のもつ、季語・切れ字の約束、句調の重さなどという特色は、発句の性格を受け継いだものであり、川柳のもつ、自由な題材、句調の軽さ、連用形による終止などの特色は、付句の性格を受け継いだものといえる。
[岩田秀行]
『『潁原退蔵著作集14・15』(1979・中央公論社)』▽『鈴木勝忠他校注『日本古典文学全集46 黄表紙・川柳・狂歌』(1971・小学館)』▽『山沢英雄・千葉治校訂『川柳集成』1~8(1985~86・岩波書店)』
江戸中期の雑俳点者(ざっぱいてんじゃ)。本名柄井八右衛門(からいはちえもん)。江戸浅草の名主(なぬし)を勤めるかたわら、1757年(宝暦7)前句付(まえくづけ)の点者を始め、『川柳評万句合(ひょうまんくあわせ)』を発刊、その巧みな選句眼は好評をもって迎えられた。さらに、1765年(明和2)に発行された『柳多留(やなぎだる)』は、万句合のなかから、前句を省いても句意のわかりやすいものを抜粋した新企画の句集で、これがいっそう川柳の名を高からしめた。この影響により、川柳の選句はしだいに前句とかかわらぬ傾向となり、ついに前句付から付句(つけく)だけが独立し、「川柳」とよばれる新文芸の誕生をみた。寛政(かんせい)2年9月23日没。享年73。台東(たいとう)区蔵前竜宝寺に葬る。なお、川柳の号は代々継承され、現代まで15代に及ぶ。
[岩田秀行]
『鈴木勝忠著『日本の作家31 無作の指導者柄井川柳』(1982・新典社)』
前句付(まえくづけ)から独立した雑俳様式の一つ。川柳風狂句。17音を基本とする単独詠だが,発句(ほつく)のように季語や切字(きれじ)を要求せず,人事人情を対象にして端的におもしろくとらえる軽妙洒脱な味を本領とする。江戸の柄井川柳が《柳多留(やなぎだる)》(初編1765)で前句付の前句を省く編集法をとったため,しだいに付け味よりも付句一句の作柄が問題とされ,やがて5・7・5単独一句で作られるようになり,初代川柳の没後,〈下女〉〈居候〉などの題詠として前句付様式から離脱独立した。〈川柳〉の名称が一般化したのは明治の中ごろからである。
初代川柳は選句の基準として3分野を設定し,〈高番(こうばん)〉(古事,時代事),〈中番(なかばん)〉(生活句),〈末番(すえばん)〉(恋句,世話事,売色,下女)に分けており,以後,代々の川柳もこれを踏襲している。まさに〈人の挙動(ふるまい),心のよしあし,尊卑の人情,上下の人心の有様,其外,世の事情をざれ句にいへるもの〉(《塵塚談》)であって,世態人情を軽妙にうがち諷する詩風を樹立したが,初代の死と寛政改革とが重なって打撃をうける。〈役人の子はにぎにぎを能(よく)覚え〉(《柳多留》初編),〈坪皿の明くを見て行くしち使〉〈寝ごい下女車がゝりを夢のやう〉(同三編)など,政治,博奕(ばくち),好色の句が《柳多留》の再板本ではさし替えられており,自由な発想も政治的圧力に封ぜられた。さらに天保改革にあたって5世川柳の腥斎佃(なまぐさいたつくり)(1787-1858)は〈敬神愛国,勧善懲悪〉という道徳を至上の目標に掲げるなど,初期の批判的詩精神を消失してしまった。皮肉なことに,川柳風狂句は前句付様式から独立をかちえたと同時に,そのはつらつとしたエネルギーを失ったことになる。しかし狂句人口は増加し,江戸を中心に,北は山形,米沢へ,東は相模,松本,名古屋,飛驒,京,大坂に拠点ができ,全国的な支持を受けて広まったが,やがて知的遊戯におちた狂句をきらい,初代の古川柳への復古をとなえる明治の新川柳運動の標的にされることになる。
→雑俳(ざっぱい)
執筆者:鈴木 勝忠
1903年(明治36)井上剣花坊,阪井久良伎(くらき)の,川柳は《柳多留》(初編)に戻れという提唱で近代川柳は始まる。2人はそれぞれ《日本》《電報》両新聞に拠って普及につとめた。剣花坊門の村田周魚は《川柳きやり》(1920),川上三太郎は《川柳研究》(1929)を発刊し,久良伎門の前田雀郎は24年丹若会を結成,今井卯木が1909年関西川柳社を創立,西田当百,岸本水府の《番傘》(1913),麻生路郎(じろう)の《川柳雑誌》(1924),椙元(すぎもと)紋太の《ふあうすと》(1929)が生まれるに至った。吟社の数は現在では全国800余社を数えるに至っている。
執筆者:神田 仙之助
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雑俳の一種。柄井(からい)川柳が評点した前句付(まえくづけ)「川柳点」の略称。前句付の題(前句)を省略し,付句を独立させたもの。俳諧の発句同様五七五の詩型をもつが,切字や季題などに束縛されず,自由な表現と内容の滑稽さ,風刺性,奇警さを特徴とする。川柳の前身である前句付の最盛期は宝暦~天明年間(1751~89)で,点者も川柳・露丸・机鳥(きちょう)ら二十数名に及び,「万句合」が盛んに刊行され,そのうちの川柳点の佳句が「誹風柳多留(やなぎだる)」「誹風柳多留拾遺」として出版され,川柳の規範となった。化政期以後は内容・句調とも低俗化し,幕末から明治初年に衰微期を迎えるが,明治30年代後半には民衆詩として復活・新生した。
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…番茶には硬化した茶葉から製造したものと,荒茶再製時に選別したものとがある。川柳(かわやなぎ)は上・中級煎茶から選別された上級番茶であり,ほうじ茶は番茶を茶褐色になるまで加熱したもので,独特のこうばしい香りがある。 釜炒茶は中国で生産される緑茶の大部分を占め,形状,産地などで数十種の銘柄がある。…
…なお,この定例会のほか,休会中も,角力会や組連主催の五の日興行の〈五五(ごご)の会〉の撰もしたが,彼の名を高めたのは高点付句集《柳多留》であった。単独句鑑賞用のこの句集が,独立詠としての川柳風狂句という新様式を生み,前句付点者川柳は,川柳風狂句の祖と仰がれることになる。ただし,彼の作品は発句3句のみで,作品をもたぬ点者として特異な存在といえる。…
※「川柳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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