改訂新版 世界大百科事典 「オキサゾール」の意味・わかりやすい解説
オキサゾール
oxazole
酸素と窒素を各1原子もつ5員環化合物。通常1,3-オキサゾールをさす。1888年にドイツのハンチA.Hantzchによって命名され,1947年にオキサゾール-4-カルボン酸の脱炭酸によって初めて得られた。フランとピリジンの中間の性質を示す。無色,ピリジンのような特有の悪臭のある揮発性の液体で,沸点69℃。水によく溶ける。弱い塩基で,塩基解離指数pKb=13.2。この環をもつ化合物は置換基によって著しく性質が異なるが,芳香族としての性質よりも,2,3位間と4,5位間の結合距離が短いのでジエン的性質が勝り,ディールス=アルダー反応(ジエン合成)をし,付加生成物からはピリジン誘導体を得ることができる。オキサゾールは,オキシムからα-アシルアミノケトンを経て硫酸または塩化チオニルと作用させて環化させるか,アルコキシイミノ酢酸エチルとオルトギ酸エチルの反応生成物を酢酸中で煮沸し閉環させてオキサゾール-4-カルボン酸エチルとし,脱炭酸してつくられる。この化合物は誘導体も含め天然には見いだされない。代謝に関係する1,3-アゾール類中にも含まれない。合成中間体としては多くの化合物の基本要素として価値が高く,酸素原子1個が付加したオキサゾロンoxazolone類はアミノ酸やタンパク質と密接な関係がある。ペニシリン合成は最初オキサゾロンを中間体として行われた。
執筆者:松本 澄+内田 高峰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報