おじゃる(読み)オジャル

デジタル大辞泉 「おじゃる」の意味・読み・例文・類語

おじゃ・る〔おぢやる〕

[動ラ四]《「おいである」の音変化》
来る」「行く」「居る」の尊敬語。おいでになる。いらっしゃる。
「身どもがよい所へやって進ぜう。こちへ―・れ」〈虎清狂・猿座頭
「木曽殿ハ…信濃国ニ―・ッテゴザル」〈天草本平家・三〉
ある」「居る」の丁寧語。ございます。あります。おります。
「イソポト言ウテ、異形不思議ナ人体ガ―・ッタガ」〈天草本伊曽保・イソポが生涯
補助動詞丁寧の意を表す。…でございます。…であります。
「その水はどこにで来て―・るぞ」〈虎清狂・薬水

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精選版 日本国語大辞典 「おじゃる」の意味・読み・例文・類語

おじゃ・るおぢゃる

  1. 〘 自動詞 ラ行四段活用 〙 ( 「お出(い)である」の変化したものという。近世には「おじゃる」の表記が普通となる )
  2. [ 一 ] 「来る」「行く」「居る」「ある」の意の敬語
    1. 「来る」「行く」「居る」の意の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。
      1. [初出の実例]「閩王のこれえおぢゃったと云たぞ」(出典:玉塵抄(1563)一七)
    2. 「ある」の意の丁寧語。あります。
      1. [初出の実例]「『其子細がござるか』『中々子細がおじゃる』」(出典:虎明本狂言・粟田口(室町末‐近世初))
      2. 「百姓づれの女ばらみた事もおじゃるまい」(出典:浮世草子・沖津白波(1702)二)
  3. [ 二 ] 補助動詞として用いる。「ある」の意の丁寧語。ござります。ございます。
    1. [初出の実例]「『たそ』『みどもでおじゃる』」(出典:虎明本狂言・連歌毘沙門(室町末‐近世初))
    2. 「ああ頼もしい心底、嬉しうおじゃる」(出典:歌舞伎・万歳丸(1694)一)

おじゃるの語誌

( 1 )本来、[ 一 ]のような尊敬語であったが、時代が下るに従い敬意が低下し、[ 一 ][ 二 ]のような丁寧語となる。狂言台本等では、「ござる」「おりゃる」「おじゃる」の三者間には敬意の差があり、前者は下人から主人に対して用いているのに対し、後者二つは、対等又はそれ以下に対する親愛気持の表現として用いている。「狂言記」では尊敬語としてよりは丁重語、または丁寧語の補助動詞(テ…、デ…など)の例の方が多い。
( 2 )室町時代末頃から「おりゃる」の衰退に伴い「おじゃる」が優勢となり、江戸時代初期頃まではかなり勢力を有していたが、江戸時代前期上方語の資料には、特定の階級大名武士僧侶)や年配の町人などに使用が限られており、比較的短命であった。
( 3 )命令形は「おじゃ」となることがあり、またそれに「や」が付いた「おじゃや」の形もある。「伎・傾城壬生大念仏‐上」の「今一度蔵へ入尋ておじゃ」、「浄・夕霧阿波鳴渡‐中」の「あの子をせめて相駕籠(あひかご)でいざおじゃやとだきよするを」など。

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